やがて本気で好きになります

第64回
パーカーが分からない?
じつは、分かるコツがあります。

チャーリー・パーカーに慣れ親しむことが、
様々なジャズを楽しめるようになるための近道だと
私は常々考えています。

しかし、かくいう私自身、
すぐにチャーリー・パーカーを楽しめたのかというと、
そうではありませんでした。

むしろ、最初は
「なんだこりゃ?」
でした。

一番大きな理由は、
「メロディをつかみにくい」。

彼は、複雑なメロディをものすごい勢いで吹くのです。
だから、「あれよ、あれよ」という間に演奏は終了。

「いったい今のは何だったんだ?」
演奏の速度に、自分の理解の速度がついていかなかったのですね。

じゃあ、スローな曲はどうなのか?といえば、これもまた同じ。
パーカーは類稀なるスピード感の持ち主なので、
テンポはゆっくりでも、彼はこのテンポの倍の速度でリズムを捉え、
音符をスラスラスラーッ!!と吹いてゆくのです。

それに加えて、彼のアドリブのフレーズ(メロディ)は、
慣れていない人にはメカニカルに感じます。
童謡や歌謡曲のように、一度聴いただけで、
口に出来るようなシンプルなものではありません。

口ずさめるメロディだったら、
演奏を「分かった」「理解した」という感触はあるのですが、
パーカーの音楽はそういう類の音楽ではないのですね。

情緒を排したメカニカルで複雑なメロディに聴こえてしまうのです。
しかも、それを凄い速度で演奏する。

これが、瞬間的即興芸術家としての彼の凄いところなのですが、
最初はなかなか分かりにくいものです。

とにかく「メロディを理解できない・追いかけられない」
というのが、
私にとっては、パーカー理解を妨げる一番のネックでした。

しかし、逆に言えば、メロディさえ理解できれば、
パーカーは一気に身近になります。

そのための良いアルバムがあります。

『チャーリー・パーカー・ウィズ・ストリングス』。
管弦楽団をバックに、パーカーが有名曲を中心に演奏したものです。

ここでのパーカーは難しいことはやっていません。
原曲をほとんど崩さずに吹いているので、
容易にメロディを追いかけることが出来ます。

メロディが頭に入れば、
次は、パーカーの音色に魅了されることでしょう。
肉厚なのに、どこまでも透き通ったアルトサックスの音色は、
彼ならではの素晴らしい個性です。

音色に魅了されれば、
次は彼のスピード感溢れるプレイにも気がつくことでしょう。
分かりやすいメロディを吹いているのですが、
ちょっとしたメロディとメロディのつなぎ目(休符)のところで、
スラスラと軽やかに吹く
合いの手のようなフレーズに注意してみてください。

この軽やかさと、スピード感の心地よさに目覚めれば、
パーカーに目覚め始めた証拠。

チャーリー・パーカーに興味がある。
だけど、いきなりワケの分からないアルバムに手を出して
自爆したくはない。

そういう人は、まずは『ウィズ・ストリングス』で
耳慣らしをしてみるのはいかがでしょうか?

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『Complete Verve Masters
with Strings』
Charlie Parker

1.Big Foot (Long Version)
2.Shaw 'Nuff
3.Buzzy
4.Yardbird Suite
5.Relaxin' At Camarillo
6.Confirmation
7.Billie's Bounce
8.Ko Ko
9.Barbados
10.Dewey Square
11.Moose The Mooch
12.Ornithology
13.Scrapple From The Apple
14.Salt Peanuts
15.Big Foot (Short Version)


パーカー入門にはもってこいの、親しみやすいパーカー。
ゴージャスなストリングスをバックにサックスを吹くパーカーは本当に気持ちよさそう。
この気持ちよさが、聴き手にも伝わってくるのです。



『フィエスタ』
チャーリー・パーカー

1.ウン・ポキート・デ・トゥ・アモール
2.ティコ・ティコ
3.フィエスタ
4.ホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー
5.ホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー(別テイク)
6.ホワイ・ドゥ・アイ・ラヴ・ユー(別テイク)
7.ママ・イネズ
8.ラ・クカラッチャ
9.エストレリータ
10.ビギン・ザ・ビギン
11.ラ・パロマ
12.マイ・リトル・スウェード・シューズ


ラテン好きな方には、こちらもおススメ。
『ウィズ・ストリングス』と同じ理由で、パーカーに親しめます。

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2006年1月16日(月)

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