やがて本気で好きになります

第65回
この曲で、ジャズにドップリと浸かってしまいました

チャーリー・パーカーの《コンファメーション》という曲は、
私にとっては思い入れの深い曲です。

私が「ベースをやろう!」と決心したのも、
「チャーリー・パーカーってスゴいんだ!」と実感したのも、
この曲がキッカケでした。

パーカーはアルトサックス吹きなのに、
何故「ベースを弾きたい!」と思ったのか。
それは、あの「いかした」メロディの下で
ベースを弾いてみたいと思ったからです。

早速、この曲のベースラインが載っている教則本を広げ、
ベースの練習をはじめました。

ところが、なかなか巧く弾けないのです。

「そうだ、プロに習おう!」

かくして、
私はプロのベーシストの個人レッスンにつくことになりました。
「《コンファメーション》の
ベースラインさえ弾けるようになれればいいや」。
ほかの曲のベースを弾くことなんてまったく考えずに、
習い始めたのです。

ベースの持ち方すら知らない学生が、いきなり
「コンファメーションだけを弾けるようになりたい」
ときたものだから、先生もさぞかし驚いたことと思います。

基礎レッスンを繰り返しながらも、
私は寝ても覚めても
《コンファメーション》の練習に明け暮れていました。
初心者がそう簡単に出来るわけがないのですが、
ひたすら、この一曲だけを繰り返し練習、練習の日々。

2〜3ヶ月後ぐらい経ったある日突然、
自分にとっては、納得のいくベースが弾けるようになりました。

そしてこの曲が弾けるようになると、
難しいと思い込んでいた他のジャズの曲も、
さほど時間をかけずに料理出来るようになってきました。

この経験は私にとっては大きいものとなりました。

次のようなことが分かったからです。

「狭く深く」が上達の近道。
「狭く深く」は結局「広く深く」に通じる。

たかだか一曲。
その、たかだか一曲だけに時間を費やしたおかげで、
様々なことを無意識に吸収し、逆に
自分の音楽と興味の守備範囲が拡がった手ごたえを感じたのです。

どういうことかというと、この曲には、
モダンジャズの重要かつオイシイ要素が、凝縮されていたからです。

“門前の小僧、習わぬ経を読む効果”とでもいいましょうか。
何も知らずに身につけた要素が、
じつはジャズの大切なエッセンスだったのです。

リズム、アクセント、音の選び方、常套句、
そして、ツー・ファイブという
モダンジャズで多用されるコード進行…。

とくに、《コンファメーション》のコード進行は
モダンジャズのオイシイ常套句の宝庫。
典型的なジャズのコード進行がカラダに染み込んだため、
他のジャズのスタンダードを弾くのがラクになりました。

さらに、色々なベーシストの
《コンファメーション》を聴きあさっていたので、
今まで知らなかったジャズマンの
素晴らしい演奏に出会うことも出来ました。

私の場合は、たまたま好きな曲を楽器で練習することで、
ジャズの理解を深めることが出来ましたが、
楽器を弾かない人にとっても同じことだと思います。

「世間的には名盤と呼ばれているが、自分にはサッパリ。」
こういうアルバムもあろうかと思います。
しかし、まずは、自分の理解・不理解はさておいて、
とにもかくにも、分かるまで、聴いてみませんか?
ある日突然、良さに目覚めるかもしれませんよ。
そして、この体験は、
一気にほかのジャズを身近に引き寄せる磁石となるのです。

あなたにとっての《コンファメーション》を
是非、見つけてください。

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『ナウズ・ザ・タイム+1』
チャーリー・パーカー

1.ザ・ソング・イズ・ユー
2.レアード・ベアード
3.キム(別テイク)
4.キム
5.コズミック・レイズ
6.コズミック・レイズ(別テイク)
7.チ・チ(別テイク)
8.チ・チ
9.チ・チ(別テイク)
10.チ・チ
11.アイ・リメンバー・ユー
12.ナウズ・ザ・タイム
13.コンファメーション


チンプンカンプンな演奏が延々と続くかもしれませんが、それらは全部飛ばしましょう。
聴いて欲しいのは、ラストの《コンファメーション》。
メロディは複雑だが、なんてウキウキと心弾む演奏なんだろう。
これを聴いてパーカーが好きになった人は大勢います。
『ウィズ・ストリングス』の次に聴くパーカーはこれだ!

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2006年1月18日(水)

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