やがて本気で好きになります

第67回
キースでデートに誘った男

私が勤めている会社に、以前勤めていた受付嬢は非常に美人でした。
美人のみならず、非常にグラマーなボディ。
いつも胸の谷間が見える服装でした。
だから、カウンターごしから来客に
「いらっしゃいませ」とお辞儀をすると、
ちょうど、胸の谷間が相手に見えてしまうのです。

だからなのか、彼女が受付にいる時間帯は、
来客がたえませんでした。
彼女見たさに、たいした用事でもないのに、
取引先の営業マンらは、
様々な口実を作って、続々と来社したものだから、
日中のロビーは常に人、それも男の客で溢れかえっていました。

ある日、バイク便のお兄ちゃんが、
彼女に「ジャズのライブ行かない?」と誘いをかけてきました。
ジャズに興味のない彼女は興味が無いことを理由に断わりました。

すると、バイク便の彼は、
彼女に1本のカセットテープを渡したのです。

ジャズを知らない受付嬢は、
「このミュージシャン知ってます?」
と私に尋ねてきました。

そのテープには、
キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』と書いてありました。

私は、思わず「ぷっ」と吹き出してしまいました。

いや、キース・ジャレットに笑ったんじゃないですよ。
このテープを彼女に渡した男の下心に笑ってしまったのです。
なぁるほどねぇ、ミエミエじゃないかぁ。

まさかとは思っていたけれども、
本当にキースの『ケルン』をダシに
女性を口説こうとする男がいるんだなぁ、
と妙に感心してしまいました。

キース・ジャレットの『ケルン・コンサート』というアルバムは、
そう連想させるだけの、
ロマンチックな雰囲気がムンムンのアルバムなのです。

ピアノ一台で、次から次へと美しいメロディを即興で奏でるキース。

安っぽい表現ですが、それこそ天にも昇るような飛翔感と、
どこまでも甘美な旋律に満ち満ちているのです。

ムード満点。
女性ならずとも、キースが紡ぎだす美しいピアノの音色とメロディに
ウットリしてしまいます。

『ケルン・コンサート』とは、そういうアルバムなのです。
もちろん、音楽的なクオリティは非常に高いですよ。
本当に即興で弾いているの? と思うほど、
甘美な旋律が次から次へと湧き出てくるのだから。

私も、このアルバムの演奏がバックに流れていたら、
女性の一人や二人口説けるんじゃないかと
錯覚をおこすぐらいですから(もちろん試したことはありません)。

しかし、まさか本当に
デートに誘うための道具に使っている人がいるとはねぇ。

それで、彼女はそれを聴いて、デートに応じたかというと、
興味がないので聴かずに捨てたようです。

残念。
是非、感想を聞いてみたかった…。
バイク便の兄ちゃんのセンスに惚れ惚れするか、
それとも、キースの、ある種クサいピアノから、
ミエミエな下心を見抜き、怒り出すのか、
興味深かったんですけどね…。

『ケルン・コンサート』で、本当に女性を口説けるのか。
どなたか、試してみてはいただけないでしょうか?(笑)

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『ザ・ケルン・コンサート』
キース・ジャレット

1.ケルン,1975年1月24日,パート1
2.ケルン,1975年1月24日,パート2a
3.ケルン,1975年1月24日,パート2b
4.ケルン,1975年1月24日,パート2c


キース・ジャレットのソロピアノの傑作にして代表作。
赤面しちゃうほど、ピュアで甘く、美しい旋律が次から次へと湧き出てきます。



『フェイシング・ユー』
キース・ジャレット

1.イン・フロント
2.リトゥーリア
3.ラレーヌ
4.マイ・レディ,マイ・チャイルド
5.ランドスケイプ・フォー・フューチャー・アース
6.スターブライト
7.ヴァパリア
8.センブレンス


もし、『ケルン・コンサート』のピアノを聴いて、
「いくらなんでも、ちょっとクサ過ぎない?ちょっと気恥ずかしいよ」
と思われた方には、こちらのソロピアノをおススメします。私も、こちらのほうが好きです。

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2006年1月23日(月)

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