やがて本気で好きになります

第68回
ジャズマンの収入は?

結論から言うと、ジャズマンの収入は、かなり安いです。

もちろん、定期的に大きな会場でライブをしたり、
高級なクラブで
レギュラーで仕事をもらえているクラスの方々もいらっしゃるので、
一概に「安い」とは言えないのですが、
多くのジャズマンは、決して高いとはいえないギャラで
今日も全国津々浦々の中小様々な店で演奏をしているのです。

安い、というよりは、かなり安い、
といったほうが正解かもしれません。

10年以上も昔の話なので、
今は状況が変わっているかもしれませんが、
あるジャズクラブのギャラは一律、
一人500円だと聞いたことがあります。
もっとも客の入りの少ない平日の昼間の話ではありますが。

しかも、この500円は、
ギャラではなく、“荷物運搬料”というそうです。
500円じゃ、タクシーの初乗り料金にもなりませんよね。
そのかわり、好きなジャズを思う存分演奏していいというわけです。

私も学生時代は、
そのライブハウスの昼の部の演奏を見に行ったことがありますが、
ステージの上にはジャズマンが4人なのに、
客席のほうは2人しかいないというようなこともありました。

演奏する人よりも、見ているこちらのほうが緊張してしまいます。

気軽にドリンクのおかわりも出来ません。
これじゃ、お店も赤字ですよね。
お金が支払われるだけ、マシなのかもしれません。

日本だけではなく、本場アメリカでも事情は一緒。

ジャズファンなら誰もが名を知るビッグネームでも、
昼間はタクシーの運転手や、
郵便配達員をやって収入を得ている人はたくさんいました。

たとえば、チャールズ・ミンガスといった大御所ですら、
郵便配達員をやっていたというのですから、
いかに彼らのギャラが安かったのかを物語っています。

ブランフォード・マルサリスという
テナー奏者のビデオを見ていたら、
こんなジョークが交わされているシーンがありました。

「ジャズマンが500万ドルを稼ぐ方法を知っているか?
えーと、まずは500万ドルを稼いで…」
ここで一同は爆笑。
それだけ、ジャズマンはお金と無縁の職業というイメージが
定着しているのです。

私の楽器の先生の本職はジャズでしたが、
メインの収入は、ジャズではなく、
音楽学校での講師と、
ジャズとは関係のない音楽グループのバックバンドでした。
いまでは、専門誌のライターもやっています。

ジャズは、思う存分自己表現の出来る素晴らしい音楽ですが、
その反面、仕事としての収入のほうは
あまり期待できない職種でもあるのです。

それでも、今日になってもジャズに憧れ、
ジャズを生業として喰っていきたい人々は大勢います。

それだけ、ジャズにはお金とは関係なしに、
演奏する者の心を捕らえて離さない魅力があるのでしょう。

くわえて、ジャズマンは女性にモテることが多いです。

収入は低いかもしれないが、
自由奔放に演奏できる快楽と、モテモテ人生。
それとは対照的な、マネーゲームに奔走した挙句、
逮捕という結末を迎えたIT企業社長のマネー人生。

私はどちらの人生が幸せで楽しいかというと、前者のほうかなぁ。

ジャズを演奏する快楽は、お金では買えないもの。
それを彼らジャズマンは本能的に知っているのでしょう。

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『直立猿人』
チャールス・ミンガス

1.直立猿人
2.霧深き日
3.ジャッキーの肖像
4.ラヴ・チャント


こんなにクリエイティヴな音楽を創造し、なおかつシーンへの影響力のはかりしれなかった人でも、
日中は生活費を稼がなければならなかったのだ。
ベーシスト、チャールズ・ミンガスの代表作『直立猿人』。

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2006年1月25日(水)

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