やがて本気で好きになります

第74回
入門書、どれがいい?

ちょっと大きな書店の音楽書コーナーに足を運ぶと、
ジャズ本のコーナーがあります。

マイルスやコルトレーンといった、
ジャズ・ジャイアンツの自叙伝や研究本もありますが、
圧倒的に多いのが、
タイトルに「入門」がついた本ではないでしょうか?

「入門本」だらけで、
どれを読めばよいのか分からないという方も多いと思います。

かくいうこの連載の趣旨も「初心者向けのジャズの入門」ですが、
HiQ編集部は、「入門」という言葉を使わずに
「入門」のニュアンスの出るネーミングを考えてくれました。
さすがです。

私は、日本で出ているジャズ関連の書籍は
殆どチェックしているつもりですが、
では、どの入門本がもっとも初心者に適しているのか選ぶとなると、
なかなか難しいものがあります。

というのも、紹介されているアルバムは同じでも、
著者の文体や、解説内容はそれこそ千差万別。
どの解説が琴線に触れるのかは、読者によって違うことでしょう。

ですから、自分のフィーリングに合った著者の本を1冊購入し、
とりあえずは著者の主張を信じて、
何枚かのディスクに耳を通すしかない、
としか言いようがありません。

しかし、それではあまりに不親切ですよね。
ですので、私自身が重宝した入門書を2冊紹介します。

まずは、油井正一の
『ジャズ ベスト・レコード・コレクション』(新潮文庫)。
昔はこれを頼りに、CDを買い集めたものです。

もちろん、分からない用語はたくさん出てくるのですが、
読んでいるうちに、
次第に聴きたいアルバムが何枚も挙がってくるのです。

「レコードは見つけたときに買え」
という主張にもうなずけましたし、
ジャズの巨人もバランスよく紹介されているので、
勉強になりました。

1枚ごとのアルバムの紹介は短いですが、
ジャズの歴史に造詣の深い著者のこと、
的確なレビューで、読んでいくうちに
聴きたいアルバムが何枚も浮かんでくるはずです。

もう1冊はジャズ喫茶「いーぐる」のマスター後藤雅洋氏の
『ジャズ・オブ・パラダイス』。
「100枚聴くまで好き嫌いを言うな!」
というセンセーショナルなイントロから始まり、
キチンと演奏を聞き込むことの大切さを説いた本です。
303枚のディスクレビューもあるので、
CD購入の際はかなり参考にしました。

両著書とも、
今では赤線やマーカーでボロボロになってしまっています。
この2冊に共通しているのは、
1枚のアルバムに対してのレビューが的確、かつ短めなこと。
しかし、的確な内容紹介なことと、
短いからこそ、
逆に、行間から想像力をめぐらせることが出来るのです。

「どんな音なのだろう?」
このような想像を逞しくさせ、ショップで購入する楽しみは、
何者にも替えがたいものがあります。

本を読み、欲しいCDを選び、内容に想像をめぐらし、
店頭で探し、購入したら、ワクワク感とともに自宅に持ち帰り、
おそるおそる購入したアルバムを再生する。

この一連の作業を通すことによって、
アルバムに対する愛着も倍化する上に、
真剣に聴くようにもなります。

私の場合は、たまたま上記2冊が「入門書」でしたが、
みなさんが「入門書」を選ぶ際は、
「文字から音が聴こえてくる」
ようなレビューが書かれたものを選べば、
まずは間違いないと思います。

――――――――――――――――――――――――――――

『ジャズ―ベスト・レコード・コレクション』
油井 正一

カバンに入る文庫版というサイズも、読み返す際には良かったのかもしれない。名著です。



 

『ジャズ・オブ・パラダイス―不滅の名盤303』
後藤 雅洋

書いてある内容に激しく同感した私は、後にこの著者の店でアルバイトをさせてもらうことに。
このジャズ喫茶のバイトの経験が、今につながっていると思います。

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2006年2月8日(水)

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