やがて本気で好きになります

第77回
『スウィングガールズ』、鑑賞のポイント

一昨年に公開された映画『スウィングガールズ』は、
学生から年配の方まで幅広い層心を捉え、
大ヒットとなりました。

この映画を観て、
ブラスバンドに入部した高校生が増えたそうなので、
喜ばしい影響力です。

『スウィングガールズ』は、
主人公、上野樹里演じる友子らを中心とする女の子たちが、
ジャズ(ビッグバンド)の演奏に目覚め、
成長を遂げてゆく物語です。

もとはといえば、
勉強嫌いの彼女たちが、夏の補習をサボる口実ではじめた楽器演奏。
しかし、やがて演奏する喜びに目覚めてゆきます。

最初は音すら出せなかった彼女たちも、
最後の大団円では、驚くほどの成長を遂げています。

「ジャズっておっさんのやるもんだべ。
こうブランデーグラスかなんか回してよー」
と馬鹿にしていた彼女たちが、
いっぱしの演奏が出来るまでに
成長する過程がコミカルに描かれているため、
ストーリーを追いかけるだけでも、十分に楽しめる作品です。

しかも、吹き替え無しで、
実際に彼女達が演奏しているという点も高い評価を受けました。

しかし、これから観る人も、もう一度観る人も、
是非、注目してもらいたい二人の登場人物がいるのです。
ベースとギターの2人組の女の子です。

彼女たちは、主人公の女の子グループとは異なる存在です。
2人は最初から楽器が出来ます。
組んでいたバンドが解散したため、演奏をする場所欲しさのため
「スウィングガールズ」に加入しました。

ビッグバンドにおいて、もっとも重要なパートは何でしょう?
トランペットやサックスといった管楽器ではなく、
じつは、ギターやベースといったリズム楽器なのです。

トランペットやサックスなどの“花形楽器”は、
演奏の巧いプレイヤーを引き抜けば良いので、
極端なことを言えば、取り替えの効くパートです。

しかし、バンドの看板となる「ノリ」は、
一朝一夕では生み出せるものではない財産なのです。

たとえば、素晴らしいノリを生みだした
カウント・ベイシー楽団では、
ギターのフレディ・グリーンの功績が称えられているように、
地味で目立たないギターこそがじつは、
ビッグバンドのノリを生み出す大事なパートなのです。

この重要な役割を、楽器経験のある女の子2人に配した点は
なかなかの着眼点だと思います。

さらに劇中では、この2人の女の子は重要な役割を果たします。
この2人の働きがなければ、
「スウィングガールズ」が存続しなかったとさえいえる
出来事が起こるのです。

地味だけれども、無くてはならない存在のギターとベース。
楽器の役どころと、劇中の役どころが見事に一致しているところが、
この映画の素晴らしいところなのです。

既に観てしまった人も、まだ観ていない人にも、
是非、ギターのヒロミとベースのユカにも注目してみてください。

一瞬のカットですが、ラストの彼女たちの笑顔、
これを拝めただけでも、観て良かったぁ、と思えるはずですよ。

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『スウィングガールズ
スタンダード・エディション』
 

『ウォーターボーイズ』で、“男子高校生とシンクロナイズド・スイミング”という
ミスマッチな組み合わせを題材にし、
努力、上達していく主人公たちの姿を爽やかに描いた矢口監督。
この第2弾は、“女子高生とジャズ”。
ウォーターボーイズほど題材のミスマッチぶりはありませんが、
それでも「ジャズっておっさんのやるもんだべ」と言っていた女子高生たちが、
少しずつ演奏することの喜びに目覚め、飛躍的な上達を遂げてゆく姿が楽しく描かれています。



『One O'Clock Jump:
The Very Best of Count Basie』
Count Basie

1.One O'Clock Jump
2.(I Got a Woman, Crazy for Me)
 She's Funny That Way
3.Fools Rush In
4.Sweet Lorraine
5.Summertime
6.April in Paris
7.Poor Butterfly
8.Lullaby of Birdland
9.One Note Samba
10.It Had to Be You
11.Broadway
12.Misty


カウント・ベイシー楽団の全盛期を支えた、ベイシー(p)、フレディ・グリーン(g)、
ウォルター・ペイジ(b)、ジョー・ジョーンズ(ds)によるリズムセクション。
この4人は、オール・アメリカン・リズムセクションと呼ばれ、
比類ないリズムセクションとして称えられています。

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2006年2月15日(水)

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