やがて本気で好きになります

第78回
竹中直人も『スウィングガールズ』では要注目

映画『スウィングガールズ』で、
注目して欲しい登場人物が、もう1人います。

竹中直人が演じる小澤先生です。
彼は高校で数学を教える教師。
というのは、表向きの顔で、じつは、熱烈なジャズマニアなのです。

自宅の観賞ルームにはおびただしい数のLPが。
サックスはフリークトーン(滅茶苦茶な音)しか、吹けませんが、
自室でジャズを流し、それに合わせて鏡の前でサックスを吹く、
いや、サックスを吹くフリをして自己陶酔にひたる、
そんな愛らしい人物を演じています。

竹中直人が
レコードに合わせて陶酔の境地に浸っている姿を見た私は、
「うーん、分かるぜ、竹中!」と思いました。
憧れのジャズマンになりたい願望というのは
誰しも持っているのではないでしょうか?

もっとも、
この陶酔の態は人前ではなかなか見せられるものではありませんが、
竹中直人は、友子をはじめとするスウィングガールズのメンバーに
この現場を目撃されてしまいます。

それがキッカケで、
彼は「スウィングガールズ」のコーチ役を
引き受けるようになるわけです。

彼の“ジャズルーム”には、
多くのLPが棚を埋め尽くさんばかりに収納されていますが、
お気に入りと思われるアルバムのジャケットは面陳されています。

面陳されたジャケットを見ると、アーチー・シェップなど、
前衛がかった激しいジャズ、
それもサックス奏者がリーダーのものが多い。

マニアが見れば、
「ははぁ、この人は激しくブロウするサックスが好きなんだなぁ」
と一目で分かる、筋の通ったラインナップなのです。

だから、彼は鏡の前でサックスをくわえて、
激しいブロウをする真似をするのでしょう。

さらに、彼は「スウィングガールズ」たちを前に、
『エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイヴ・スポット』
のパーソネルを、
「エリック・ドルフィー、ブッカー・リトル、
マル・ウォルドロン…」
と陶酔顔で語ったりもします。

エリック・ドルフィーも
激しく咆哮するように吹くサックス奏者です。
なかなか好みが一貫しているなぁと思いました。

こんな痒いところにも 
出演者のキャラクターが作りこまれているのは、さすがです。

彼の自宅のリスニングルームも同様です。
ジャズマニアにありがちなインテリア、レイアウトなのです。
だから、地方の大きな家に住む
熱心なジャズマニアのリスニングルームを借りて撮影したのだと
私は思っていました。

ところが違うんですねぇ。
この映画のために作ったセットなのだそうです。

いやはや、なかなかの凝りっぷりです。
ストーリーも楽しめると同時に、
ジャズ好きをニヤリとさせるディティールの作りこみも楽しめる
『スウィングガールズ』。

ジャズに関心の無い人から、ジャズ好きまで、
多くの人の心を捉えたのも頷けます。

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『エリック・ドルフィー・
アット・ザ・ファイヴ・スポット VOL.1+1』
エリック・ドルフィー

1.ファイアー・ワルツ
2.ビー・ヴァンプ
3.ザ・プロフェット
4.ビー・ヴァンプ


竹中直人が、劇中でウンチクを語るアルバムがコレ。私もこのアルバムは大好きです。

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2006年2月17日(金)

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