やがて本気で好きになります

第82回
哀愁のトランペッター、ブッカー・リトル

エリック・ドルフィーのアルバムの中で、
私がもっとも好きな1枚が、
『エリック・ドルフィー・アット・ザ・ファイヴ・スポットvol.1』
です。

『スウィング・ガールズ』で、
竹中直人が陶酔顔でパーソネルを暗唱していたアルバムですね。

ライブの異様な熱気がヒリヒリと伝わってくる、
凄いアルバムなのです。

ドルフィーのプレイは凄まじく、
アルトサックスやバスクラリネットは、
まるで彼の肉声のごとく、生々しく咆哮しています。

ドルフィーの鬼気迫るプレイに圧倒され続けていた私ですが、
最近は、彼とともにフロントを飾る
ブッカー・リトルというトランペッターにも魅了されています。

ドルフィーを赤く燃え盛る炎だとすると、
ブッカー・リトルの先鋭的だけれども沈着なプレイは、
青白く静かに燃える炎です。

理知的なプレイですが、
どこか哀しさをたたえた音色も琴線に響きます。
彼の飴色のトランペットには、常に哀愁が漂っているのです。

彼は、ディジー・ガレスピーのように、高音域を吹きまくったり、
フレディ・ハバードのように
テクニックで圧倒するタイプのトランペッターではありません。

彼らテクニシャンに比べれば、
少し不器用なところすら感じさせるトランペッターかもしれません。

しかし、彼には“音色”という武器があります。
色に喩えるならば青。
この青は、喩えるならば、秋の空。
澄み渡った青の中に、どこか一抹の哀しさが宿っているような、
そんな音色なんですね。

『ファイブ・スポット』でも
ブッカー・リトルの魅力を味わうことが出来ますが、
やはり主役はドルフィー。
ブッカー・リトルは、ドルフィーをセンスよく引き立てる
“助演男優”的な位置づけです。

リトルの魅力をたっぷりと味わうには、
やはり彼のリーダーアルバムを聴くのが良いと思います。

そこでオススメなのは、
彼のリーダーアルバム『ブッカー・リトル』。
トランペットのイラストのジャケットも秀逸ですが、
彼の哀愁のトランペットを味わうにはもってこいです。

彼のトーンは、
そこはかとない翳りや湿り気の要素を好む日本人の心に
深く染み入ることでしょう。

曲、演奏、アレンジ、アドリブ、リズム…。
ジャズを味わうポイントは多くありますが、
「音色」という要素を忘れてはいけません。

音色一発で、
聴き手を虜にしてしまうジャズマンはそう多くはいませんが、
ブッカー・リトルは間違いなく、
音色だけでも聴き手を魅了してしまう数少ないジャズマンなのです。

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『ブッカー・リトル』
ブッカー・リトル

1.オープニング・ステイトメント
2.マイナー・スイート
3.ビー・ティーズ・マイナー・プレア
4.ライフズ・ア・リトル・ブルー
5.ア・グランド・ヴァルス
6.フー・キャン・アイ・ターン・トゥ


音色一発で聴き手を虜にするトランペッター、ブッカー・リトル。
選曲も彼の哀愁漂うトランペットの魅力を引き出すものばかり。


『エリック・ドルフィー・
アット・ザ・ファイヴ・スポット』
エリック・ドルフィー

1.ファイアー・ワルツ
2.ビー・ヴァンプ
3.ザ・プロフェット
4.ビー・ヴァンプ


アグレッシヴなドルフィーも良いが、彼とは好対照のブッカー・リトルのプレイにも注目。

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2006年2月27日(月)

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