やがて本気で好きになります

第86回
マイルスのエネルギッシュな一枚

トランペッター、マイルス・デイヴィスの演奏は
「卵の殻の上を歩くようにトランペットを吹く」
と形容されていました。

つまり、バラードの名手、表現がとてもデリケートという意味です。

たしかにその通りで、
名演の誉れ高い《枯葉》や《ラウンド・ミッドナイト》、
それに、《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》などは
すべてバラードです。

しかし、彼の本領はバラード表現だけではありません。
力強く、エネルギッシュな演奏も数多く残しています。
そして、これら演奏の多くがライブ演奏だということも
注目に値します。

思うに、彼はライブでの演奏と、
スタジオでの演奏をうまく使い分けていたのではないかと思います。

やり直しのきかない一発勝負のライブでは、
勢いあふれる力強い演奏を。
落ち着いた環境で演奏に集中できる環境(スタジオ)では、
デリケートなバラード表現を追及する。

もちろん、ライブでも彼はバラードを演奏するし、
スタジオでも白熱した演奏をしていますが、
バラードで評価の高い演奏はスタジオ録音のものが多く、
エネルギッシュな吹奏で名演と呼ばれている演奏は、
ライブでの演奏が多いことも事実です。

『フォア・アンド・モア』というアルバムは
エキサイティングなライブを収録した1枚です。
しんみりしたマイルスしか聴いていない人には是非オススメしたい
エキサイティングな1枚です。

ドラマーのトニー・ウイリアムスの、
きめ細かく、勢いの溢れたシンバルが
全編に渡って大活躍しています。
彼のドラミングが、いわば、演奏の動力源。
メンバーを焚き付け、演奏に火をつけています。

ハービー・ハンコックの知的、かつエキサイティングなピアノに、
テナーサックスのジョージ・コールマンの吹奏も熱いです。

もちろん、リーダーのマイルスのトランペットの渾身のプレイは
どこまでも力強く、思わずコブシを握りしめてしまいます。

是非、大音量で浴びるように聴いて欲しい1枚ですね。

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『Four & More』
Miles Davis

1.So What
2.Walkin'
3.Joshua
4.Go-Go (Theme and Announcement)
5.Four
6.Seven Steps to Heaven
7.There Is No Greater Love
8.Go-Go (Theme and Announcement)


1964年2月12日、ニューヨーク、フィルハーモニック・ホールで行われたライヴ。
とにかく、熱い! この日のライブで演奏された曲で、勢いのある演奏はこのアルバムに、
バラードなどのスタティックな演奏は『マイ・ファニー・バレンタイン』(下)に収録されています。


『マイ・ファニー・ヴァレンタイン』
マイルス・デイヴィス

1.マイ・ファニー・バレンタイン
2.オール・オブ・ユー
3.ステラ・バイ・スターライト
4.オール・ブルース
5.アイ・ソート・アバウト・ユー


「卵の殻の上を歩く男」マイルスのバラード表現の巧さは、これら名盤で味わえます。


《枯葉》といえば、『サムシン・エルス』

『サムシン・エルス』
キャノンボール・アダレイ

1.枯葉
2.ラヴ・フォー・セール
3.サムシン・エルス
4.ワン・フォー・ダディ・オー
5.ダンシング・イン・ザ・ダーク



《ラウンド・ミッドナイト》の決定版

『ラウンド・アバウト・ミッドナイト』
マイルス・デイヴィス

1.ラウンド・ミッドナイト
2.アー・リュー・チャ
3.オール・オブ・ユー
4.バイ・バイ・ブラックバード
5.タッズ・デライト
6.ディア・オールド・ストックホルム
7.トゥー・ベース・ヒット
8.リトル・メロネー
9.バッドオー
10.スウィート・スー,ジャスト・ユー



《マイ・ファニー・ヴァレンタイン》といえば、『クッキン』

『クッキン』
マイルス・デイビス

1.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
2.ブルース・バイ・ファイヴ(フォールス・スタート)
3.ブルース・バイ・ファイヴ
4.エアジン
5.チューン・アップ~ホエン・ライツ・アー・ロウ


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2006年3月8日(水)

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