やがて本気で好きになります

第88回
昭和24年に、このような演奏が!

昔組んでいたジャズバンドのメンバーに、
年代でジャズを聴いているサックス奏者がいました。

たとえば、私が「あの曲をやりましょうよ」と提案すると、
きまって、「それはいつの録音ですか?」と返ってくるのです。
ジャズのデータにそれほど詳しくない私は、
「えーと、いつだったっけ?」と、しどろもどろ。

ですので、彼女に曲を提案するときは、
必ず録音年代を尋ねてくるので、いつも下調べが必要でした。

そのたびに、
「良いジャズに時代は関係ないじゃん!」と思っていたものです。

もちろん、お気に入りのジャズマンなら、
録音年代を意識して聴くこともありますが、
基本的には、音楽を楽しむのに、
録音された年代は関係ないと私は思っています。
古かったり、新しかったりで、
音そのものの価値は上がりもしなければ、下がりもしないのです。

しかし、例外もあります。
これから紹介するアルバムは、
録音年代を念頭に置いて聴くと、ビックリしてしまいますよ。
リー・コニッツ(as)の
『サブコンシャス・リー』というアルバムです。

“クール”という
新しいコンセプトをジャズに持ち込んだピアニスト、
レニー・トリスターノの門下生のコニッツが、
その師匠とともに録音したアルバムですが、
そのアブストラクトなサウンドは非常に未来的な響きがするのです。
それは、21世紀になった今日においても、
なお新鮮な驚きと、未知なる響きに満ちた超時代的な演奏なのです。

録音年代を見ると1949年1月。
なんと、昭和24年ではないですか。
日本は敗戦直後の混乱期です。
この年の4月に、1ドル360円の単一為替ルートが実施されますが、
その3ヶ月前に録音されているのですね。

《リンゴの唄》や《青い山脈》が流れていた時代に、
アメリカでは、一部の先鋭的なジャズマンたちが
このように超近代的なアプローチのジャズを録音していた!

このような驚きと、
自分の中のイメージのギャップを楽しみながら聴くのも、
また楽しいものです。

ちなみに、リー・コニッツは、冷ややかで心地よい音色の持ち主で、
内なる情熱を露骨に表には出さずにプレイをする、
ストイックなサックス奏者です。
言葉で形容するのには限界がありますが、
ヒンヤリ、柔らか、それなのに鋭利なサックスです。

一見クールに見えるサウンドのヒダから見え隠れする、
熱いパッションと斬れ味鋭いサックスの音色に魅せられたら、
中毒的にハマってしまうこと請け合いです。

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『サブコンシャス・リー』
リー・コニッツ

1. サブコンシャス・リー
2. ジュディ
3. プログレッション
4. レトロスペクション
5. アイス・クリーム・コニッツ
6. ユー・ゴー・トゥ・マイ・ヘッド
7. マシュマロウ
8. フィッシン・アラウンド
9. タートロジー
10. サウンド・リー
11. パロ・アルト
12. レベッカ


「サブコンシャス」とは潜在意識化の〜という意味。
凄い演奏をしたコニッツは、
「あのときの自分は本当に自分だったのだかよく分からないんですよ」と回想する。
まさに、サブコンシャス・リー!

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2006年3月13日(月)

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