やがて本気で好きになります

第89
ジャズの黄金期・1956年

モダンジャズの全盛期は1956年とされています。
たしかに、この年は、
ジャズ史に残る多くの出来事が起こっています。

まずは、マイルス・デイヴィスによるマラソン・セッション。
彼率いるクインテットは、
たった2日で、アルバム4枚分の録音をしました。
これは、大手メジャーレーベルと契約した彼が、
当時所属していたレーベルとの
契約を解消するために行われたレコーディングです。

残された契約枚数を消化するための録音ですが、
どの演奏も「やっつけ仕事」な内容ではなく、充実したクオリティ。
ほとんどの曲をワン・テイクで仕上げたのも驚きです。

吹き込まれた曲は、
『クッキン』、『リラクシン』、『ワーキン』、『スティーミン』
というアルバムに分散収録され、
この4枚は「〜ing四部作」と呼ばれ、
どれもが名盤の誉れ高いアルバムとなりました。

また、セロニアス・モンクの最高傑作
『ブリリアント・コーナーズ』に、
ソニー・ロリンズの代表作
『サキソフォン・コロッサス』が吹き込まれたのもこの年です。

トランペッターのクリフォード・ブラウンが
交通事故で亡くなったのもこの年です。
この事故の際、同乗していたバンド仲間にして、
バド・パウエルの弟、リッチー・パウエル(p)も亡くなっています。

今後のシーンに大きな影響力を与えることになる、
新しい感性を持った新人もデビューしています。
ビル・エヴァンス、セシル・テイラーという2人のピアニストです。

エヴァンスはやがて新しいピアノトリオの表現形式を編み出し、
ジャズピアノの表現領域を拡大しました。
一方でセシル・テイラーは、
フリー・ジャズの中心的人物として頭角を現し、
後進に大きな影響を与えています。

傑作の誕生、重要人物の死去、新人のデビュー。
56年は、ジャズの歴史の中においては、激動の年でした。
また、モダンジャズの円熟期だったと同時に、
転換期でもあったのです。

1956年は、日本だと昭和31年。
日本での主だった出来事を列記してみましょう。

・伊豆大島の三原山大噴火
・石原慎太郎の『太陽の季節』が第34回芥川賞受賞
・『週刊新潮』創刊
・黒部ダム工事現場の作業員宿舎が雪崩で崩壊
・巨人軍の川上哲治が史上初の2000本安打を達成

アメリカは、この年ビキニで初の水爆投下実験を行っています。
南極が大陸であるということが発見されたのもこの年です。

ジャズのみならず、
世界的にも様々な出来事が起きている年のようですね。
世の中が熱いと、音楽も熱い?

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『クッキン』
マイルス・デイビス

1.マイ・ファニー・ヴァレンタイン
2.ブルース・バイ・ファイヴ(フォールス・スタート)
3.ブルース・バイ・ファイヴ
4.エアジン
5.チューン・アップ~ホエン・ライツ・アー・ロウ


『リラクシン』
マイルス・デイビス

1.イフ・アイ・ワー・ア・ベル
2.ユーア・マイ・エヴリシング
3.アイ・クッド・ライト・ア・ブック
4.オレオ
5.イット・クッド・ハプン・トゥ・ユー
6.ウディン・ユー


『ワーキン』
マイルス・デイビス

1.イット・ネヴァー・エンタード・マイ・マインド
2.フォア
3.イン・ユア・オウン・スウィート・ウェイ
4.テーマ(テイク1)
5.トレーンズ・ブルース
6.アーマッズ・ブルース
7.ハーフ・ネルソン
8.テーマ(テイク2)


『スティーミン』
マイルス・デイビス

1.飾りのついた四輪馬車
2.ソルト・ピーナッツ
3.サムシング・アイ・ドリームド・ラスト・ナイト
4.ダイアン
5.ウェル・ユー・ニードント
6.ホエン・アイ・フォール・イン・ラヴ


マイルスのマラソン・セッション4部作。どれもが傑作ですが、
私の場合は『クッキン』、次いで『リラクシン』が好きです。



『サキソフォン・コロッサス』
ソニー・ロリンズ

1.セント・トーマス
2.ユー・ドント・ノウ・ホワット・ラヴ・イズ
3.ストロード・ロード
4.モリタート
5.ブルー・セヴン


『ブリリアント・コーナーズ』
セロニアス・モンク

1.ブリリアント・コーナーズ
2.バルー・ボリヴァー・バルーズ・アー
3.パノニカ
4.アイ・サレンダー,ディア
5.ベムシャ・スウィング


ソニー・ロリンズ、セロニアス・モンク。この2人の最高傑作が録音されたのも1956年。


『ザ・ビギニング・アンド・ジ・エンド』
クリフォード・ブラウン

1.アイ・カム・フロム・ジャマイカ
2.アイダ・レッド
3.ウォーキン
4.チュニジアの夜
5.ドナ・リー


1956年、享年25歳で事故死した、クリフォード・ブラウン。
これは死の直前のライブ音源が収録されている、と長らく思われていたが、
実は死の前年に録音されていたことが最近、判明。
もっとも、死の直前だろうが、直前じゃなかろうが、本人は死を意識して演奏しているわけではないので、
ブラウニー(クリフォード・ブラウンの愛称)のトランペットはいつだって素晴らしいの一言です。

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2006年3月15日(水)

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