やがて本気で好きになります

第95回
「桃太郎」でフリージャズを語ってみる

しつこく「桃太郎」の話です(笑)。

「川から桃がドンブラコと流れてくる」
「桃から赤ん坊が生まれ桃太郎と名付けられる」
「成長して鬼が島に鬼退治に行く」
「サル、キジ、犬を部下に従える」

これらの要素は、物語を形成する大事な骨格です。

ジャズにおいては、コード進行がそれに当たり、
楽器で“語る”上でのガイドラインとなります。

いっぽう、
「桃太郎がいた」
「鬼もいた」
「さあ、あとは自由に物語を即興で作って語ってください」

のように “語り”の制約が少なくなるのがモード奏法。

自由度が増したぶん、
表現者のセンスが如実に現れてしまう手法でしたね。

では、フリージャズは?

簡単に言えば、さらに制約が、無くなった状態の演奏です。
だから、一聴すると、
滅茶苦茶で、勝手な演奏しているんじゃないかと思うほど、
奔放かつ無秩序、騒音に近い演奏が多いことは確かです。

ただ、
「フリージャズとは、滅茶苦茶っぽく聴こえる騒々しい音楽だ」
と短絡的に決め付けてしまうわけにもいきません。

コード進行が無くなり、メロディが「フリー」な演奏あれば、
リズムが「フリー」なものもあります。
また、リズムやメロディに対しては「フリー」でも、
演奏においては一定の約束を設けているものあり、一口で
「フリージャズとはこういうものです。
こういう演奏方法がフリージャズです」
と定義付けるものはじつはないのです。

ただ、モード奏法以上に、
演奏に際する約束事が取り払われた状態と解釈していたければ、
間違いないと思います。

あとは、
優れたフリージャズの演奏を実際に聴いてみてください。

60年代になると、時代背景もあって
様々なフリージャズが雨後のタケノコのように出現しましたが、
優れた演奏とは言いがたいものも多いです。

やはり、時代の風雪に耐え、
いまなお多くのリスナーに指示されている
“ホンモノ”の表現者の演奏を聴くのが一番でしょう。

オーネット・コールマン(as)、
アルバート・アイラー(ts)、
セシル・テイラー(p)。

まずは、この3人の実力者の音に接してもらうのが良いと思います。

フリージャズという
大雑把なジャンルで括られている3人ではありますが、
三者三様、演奏に関しての考え、アプローチは違います。

しかし、音そのものが聴衆に与える衝撃や、
まるで生き物のように奔放に躍動する音は、
彼らの表現の力強さを物語っています。

最初は分からなくても、何度も聴いているうちに
次第に彼らが放った音の魅力に気付かれることでしょう。

――――――――――――――――――――――――――――

『ジャズ来るべきもの』
オーネット・コールマン

1.淋しい女
2.イヴェンチュアリー
3.ピース
4.フォーカス・オン・サニティー
5.コンジニアリティー
6.クロノロジー
7.モンク・アンド・ザ・ナン
8.ジャスト・フォー・ユー


オーネット・コールマンの代表作の一枚。奇妙に捩れつつも、どこか美しいメロディ、サウンドの肌触り。


『Spiritual Unity』
Albert Ayler

1.Ghosts [First Variation]
2.Wizard
3.Spirits
4.Ghosts [Second Variation]


まるで、臓腑を抉り出すかのようなテナーサックスの咆哮。音そのものが持つ衝撃はアイラーのみが持つ力。


『ユニット・ストラクチャーズ』
セシル・テイラー

1.ステップス
2.エンター・イヴニング
3.ユニット・ストラクチャーズ:
 アズ・オブ・ア・ナウ~セクション
4.テイルズ


セシル・テイラーは、ズバ抜けたピアノのテクニックに加え、アンサンブルを構築し、
次の瞬間には一瞬にして瓦解させるという、グループ表現の統率力も並大抵ではありません。

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2006年3月29日(水)

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