やがて本気で好きになります

第96
オーネット・コールマンは難しくない!

先日来日したオーネット・コールマンは、
フリージャズの代表人物に必ず挙げられます。
しかし、私は彼をフリージャズの人とは思っていません。

フリージャズというレッテルが却って彼の音楽の敷居を高くし、
難解なものという誤解を植えつけているのではないでしょうか。

彼は、コード進行やスケールの制約から
「フリー」なアプローチをする人です。

「桃太郎」を語ることで“自分色”を出すことは容易ですが、
ストーリーや登場人物の制約が取り払われた中、
「内容が面白ければ、何を吹いても良い。
桃太郎ですら無くてもよい」
という命題の中でアドリブをとることは非常に難しいことです。

何を吹いても良い反面、
何を吹けば良いのか分からなくなる危険性もあるからです。

プロの演奏家でも、日頃の練習内容が無意識に出てしまったり、
手癖(クリシェ)に陥ってしまいがちになるはずです。
制約が取り払われた自由な状態の中で
「聴かせる内容」を演奏するには、
かなりのセンスと創造力が必要とされるのです。

その点、オーネットの場合は、制約が取り払われた中、
奔放にアルトサックスを操り、
溢れんばかりにメロディが沸いてくるのです。

時にアグレッシブな一面も見せ、
時に単純で素朴のきわみとも言えるほどのメロディも
平然と放ちます。
調子っぱずれで奇妙に抽象的なメロディの断片も、
不思議と聴き手の心を掴んで離しません。

制約の無い中、これほど創造的に歌い
(しかも誰にも似ていない自分だけの個性で)、
なおかつ説得力のあるアドリブを繰り広げるコールマンの歌心は
並大抵ではありません。

だからこそ、オーネットは、
「フリージャズの人」というよりは、
「メロディ・ジャズの人」として括ったほうが良いんじゃないか
と私は思うのです。
「メロディ・ジャズ」というのもヘンな括りですけどね…。

そんな、オーネットの歌心と、
泉のごとく溢れ出るメロディを堪能出来るのが
『アット・ザ・ゴールデン・サークルvol.1』です。

音楽ビジネスに嫌気がさし、
2年ほどシーンから遠ざかっていたオーネットですが、
65年にシーンに復帰。
レギュラートリオを率いてヨーロッパへ赴き、
ツアーの最後に訪れた
ストックホルムのジャズクラブ、
ゴールデン・サークルでの演奏が収められているのが
このアルバムです。

躍動感溢れるリズムに乗って、
尽きることなく出てくるオーネットの底なしの歌心が味わえます。

このアルバムのもう一つの聴きドコロは、
チャールズ・モフェットのドラミングです。
一曲目の《フェイシーズ・アンド・プレイシズ》での
ドラムの躍動感といったら!
オーネットのサックスとともに、
イキの良いスリリングな演奏をも味わえる
素晴らしいアルバムなのです。

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『ゴールデン・サークルの
オーネット・コールマン』
オーネット・コールマン

1.フェイセス・アンド・プレイセス
2.ヨーロピアン・エコーズ
3.ディー・ディー
4.ドーン


エキサイティングな1曲目から、拍子抜けするほど素朴なメロディの《ヨーロピアン・エコーズ》、
メロディの輪郭がつかめれば病みつきになる《ディー・ディー》など、
オーネットの歌心とシャープな演奏が満載!


『クロイドン・コンサート』
オーネット・コールマン

1.サウンズ・アンド・フォームス・フォー・
  ウインド・クインテット
2.サッドネス
3.クラージマンズ・ドリーム
4.フォーリング・スターズ
5.サイレンス
6.ハッピー・フール
7.バラッド
8.ドーナッツ


とにかく《クレイジーマンズ・ドリーム》! 豊穣なメロディとリズムの海につかり、気持ちよく泳いでください。

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2006年3月31日(金)

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