やがて本気で好きになります

第97回
アルバート・アイラーを感じろ!

前回紹介した、
オーネット・コールマンが“メロディの人”だとすると、
アルバート・アイラーは“肉声の人”です。

もっといえば、“赤裸々なサックス”を吹く人。

彼も“フリージャズ=難解”なイメージがつきまといがちな人です。
しかし、アイラーほど、剥き出しの感情を
サックスを通して吐き出した人はいません。

建前やキレイごと抜き。
まるで、サックスが身体の一部のように震え、咆哮します。
そしてその音色は、あたかも人の声のように、
喚き、啜り泣き、笑い、猛ります。

彼のサックスは計算されたところがありません。
本能の赴くままに、自由に吹きまくります。
ある意味、とても天然なサックス吹きともいえます。

だから、
時として素朴さ丸出しの無防備な音をさらけ出すこともあるし、
逆に身も凍るほどゾッとするような音を出すこともあります。

赤裸々な、
非常に人間臭いアイラーの“肉声”に我々は感動するのです。

最初に彼のサックスを聴いた人は、驚くことでしょう。
音そのもののインパクトがスゴイですから。
臓腑を搾り出すかのような“肉声”に
グロテスクさすら感じるかもしれません。
きっとアイラーは、
“解ろう”としてはいけないジャズマンなのだと思います。
“理解しよう”として追いかければ追いかけるほど、
逃げ水のように遠ざかり、実体は掴めずじまい。
しかし、頭で分析することをやめ、“感じよう”とすれば、
きっとアイラーの音のほうから近づいてくることでしょう。
やがて、そこに無垢な美しさを見出すことでしょう。

凶暴さと、丸裸な純真さを一気に吐き出すアイラーのスタイルは、
小難しいジャズを、一気に先祖帰りさせてしまった感があります。

そんな彼は、
1970年、三島由紀夫が市ヶ谷の自衛隊基地で割腹自殺したその日、
ニューヨークのイーストリヴァーで
自殺とも他殺とも判別不可能な謎の死体となって発見されました。

彼の死後、すでに30余年の月日が経っていますが、
アイラーのサックスは時を越えた今でも、
多くのリスナーの胸を打つのです。

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『Spiritual Unity』
Albert Ayler

1.Ghosts [First Variation]
2.Wizard
3.Spirits
4.Ghosts


音そのものの衝撃。
最初は面食らうかもしれませんが、《ゴースト》の単純素朴な旋律をとっかかりに、
少しずつ世界を広げてゆきましょう。とにかく音に浸ってください。


『マイ・ネーム・イズ・
アルバート・アイラー』
アルバート・アイラー

1.自己紹介
2.バイ・バイ・ブラックバード
3.ビリーズ・バウンス
4.サマータイム
5.オン・グリーン・ドルフィン・ストリート
6.C.T.


アイラー入門には最適かも。
バックのリズムが“普通の”4ビートなので、かえってアイラーの特異な個性を把握しやすいと思います。


『グリニッチ・ヴィレッジの
アルバート・アイラー』
アルバート・アイラー

1.フォー・ジョン・コルトレーン
2.チェンジ・ハズ・カム
3.トゥルース・イズ・マーチング・イン
4.アワー・プレイヤー


混沌とした中の美しさ。アイラーのパワフルなブロウとクラクラと眩暈がするようなアンサンブル。

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2006年4月3日(月)

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