時代の美意識

第18回
堀文子さんとお会いして

ある女性誌の対談で、日本画家の堀文子先生とお会いしました。
堀先生は、以前から私が深く尊敬していた方です。
『ホルトの木の下で』を読むと、
自由奔放でありながらご自身の信念に基づき、
精一杯生きてこられたことがわかります。

堀先生は「花の堀文子」と称される一方で、
「孤高の画家」とも言われてきました。
画壇に属さず、自らの目と肌で生命を捉え、
その不思議を見つめて絵を描き続けてこられました。
90歳になられる今日まで、そのように画家として生きてこられて、
仕事の厳しさも十分知っていらっしゃる。
だから世の中に媚びない。
それでいて、とても人に気を遣われる方でいらっしゃいます。

生き方も小気味いい。
海外にもたくさん出かけられていますが、
言葉もわからないのに旅先ではガイドを頼まないそうです。
土地を知っている人が一緒だと、
その人が案内してくれる場所にしか行けない。
勝手ができないから、知らないところに行くときは一人に限ると。

対談では
「人には愛されないことがモットー。職人は愛されてはいけない」
ともおっしゃっていました。
同じように考えてきた私にとって、大変心強い言葉です。
堀先生は絵の職人であることを本分とされ、
私は美の職人であることを大切にしてきました。
職人は愛されてはおしまい。
愛されることを大事にしてしまえば、媚が生まれ、
生み出すものがぶれてしまうからです。

そうした厳しさをもちながら、対談に同席した娘の
「堀先生って素敵ですね」との言葉に
「私って、すごく危険なのよ。ダメよ、信じちゃ」
などとおっしゃる。
なんてチャーミングで素敵な方だろうと思いました。
80歳、90歳になったとき、
このように言える人になりたいと心の底から思いました。

素朴で、謙虚で、でも傲慢で、ただそこに居るだけで華となる。
そうした90歳になれたら幸せです。
堀先生は、私がなりたい将来の姿です。


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2009年7月9日(木)

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