時代の美意識

第32回
嘘がないことは清々しい

映像の現場の仕事から、
化粧品ブランドのクリエイターになったときのことです。
プロフィールを作らなければならず、
どこまで公表すべきか悩んだことがありました。

ヘアメイク時代に母の介護のため8年間ブランクができたこと、
離婚していること、
そして貧乏だった日々が続いていたこと…。
こうした事実、とくに貧乏であったことが
ブランドのイメージを傷つけることになりはしないかと
心配になったのです。

そのとき兄から言われた一言があります。

「貧乏は恥ずかしいことじゃない」

こう言われて怖いものがなくなり、
これまでの自分の人生をすべてオープンにすることができました。
今は、隠すことなく
すべてをさらけ出しておいてよかったと思います。
隠していたら、私は多くの方に嘘をついたことになります。
今でも嘘をつき続ける羽目に陥っていた可能性があります。

嘘を一度でもついたら、
その嘘を守るために嘘の上塗りが必要になります。
それは苦しいことです。
嘘をついている自分自身にも嫌気がさします。
それもまた苦しい。

嘘がないと嘘の発覚に怯えることもありません。
隠すべきものが何もないと、常に清々しい気持ちでいられます。
兄の言葉がなければ、
私は嘘による苦しい思いを
抱え続けることになっていたかもしれない。
そう思うと兄には本当に感謝しています。

1歳違いの兄には経済的にも精神的にも、
いろいろな面で助けてもらいました。
気がつかない当たり前のことをサラリと教えてくれる兄の言葉は、
私にとって大切な生き方の道しるべです。

そういえば
「仕事が忙しくて疲れた。とにかくゆっくり眠りたい」
とこぼしたときには、こんなことを言われてしまいましたっけ。
「お前な。死んだらずっと眠れるんだから、
今のうちに寝ないで目一杯働け」

おっしゃる通り。
「体を壊さない程度にがんばるか!」
と、もう一度気合いを入れ直した私です。


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2009年8月27日(木)

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