第39回
撮影ロケの思い出
映像の現場では映画とテレビの両方でヘアメイクが仕事です。
テレビの撮影では早朝ロケは当たり前。
集合場所は、新宿、渋谷、成城学園の三箇所と決まっており、
朝の4時ぐらいになると、
「○○組」と組ごとに分かれたロケバスが
ズラリと駅前を占拠します。
○○組の○○に入るのは監督の名前。
田中監督なら「田中組」というわけですね。
ロケには初めてエキストラで参加する人もいます。
ロケバスの数が多いため、初めての人たちは右往左往。
どのバスに乗っていいかわからず、
「なんかわからないから乗っちゃいましょう」
と乗り込んだバスが違う組で、
違う撮影に連れていかれちゃうなんてことも結構ありました。
映画の場合は地方ロケが多いので、
ひとつの地域に留まり、時間をかけて撮影するのが通常のスタイル。
テレビと比べれば費やす時間はかかるけれど、
細かい移動がない分、体はラクです。
その代わり長丁場の撮影なので、
ヘアメイクとして気を使うことも増えます。
たとえば男性俳優の髪。
長丁場の撮影では、撮影中に髪の毛が伸びてしまうのです。
男性俳優は大半が短髪ですから、
撮影開始時と比べて襟足のあたりが変わっていきます。
2ミリでも3ミリでも伸びると、
それまでとつながらなくなってしまうため、
同じ形を保つようにカットするのもヘアメイクの仕事です。
髪を染めている人も同様に、
同じ状態を保つため根元を染めることもしましたし、
ビンの生え際が伸びて白髪が出てきていたら、
マスカラを塗る裏技でカバーしたりもしました。
映像をつくる現場は、
とにかく細かいことに気を使わなければならず、じつに大変です。
映像は作るより観るに限る、ですね。
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