中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第19回
「洪憲年製」磁器の謎を追え その2

前回までのあらすじ・・

中華民国の大統領となった袁世凱が、
更に皇帝になろうとして失脚、
予定していた皇位戴冠式の為に焼いた高級磁器は
人の目に触れる事なく闇の中に葬り去られてしまった。

ところが後年、器物の裏に「洪憲年製」と銘された磁器が存在し、
コレクターの間で
人気となっている事が世に知れるようになります。

また、それらが果たして本当に袁世凱が作らせたものかどうか?
という事も盛んに議論されるようにもなりました。

皇帝になろうとした袁世凱、
そして皇位戴冠式の為に準備した高級磁器が彼の失脚と共に離散、
それらを捜し求める事に情熱を注ぐ古陶磁器愛好家が沢山いても
不思議ではありません。

では、この「洪憲年製」の磁器はどういうものだったのでしょうか。
それは、清朝時代の皇帝の直属の窯
いわゆる官窯で焼かれていた最高級の磁器を踏襲したもので、
最高の素材を用い最高の技術で作られたと言われています。

真っ白で透き通るような白磁の上に、
最高の顔料を用いて精巧極まりない絵付けがされた
「粉彩」という焼き物です。
特に釉薬に使う顔料などは故宮に残された清朝時代の最高級品を
惜しげもなく使ったと言います。

確かに国際的なオークションなどで僅かに散見される
「洪憲年製」磁器は清朝でも
最高の磁器が製作された「乾隆帝時代」のものと比べても
遜色ない出来栄えのものが多いのです。
皇帝になる為に作った磁器、皇帝になれずに行方知れずに、
その後コレクターに大人気・・
話はこれで一件落着のようですが、
ここから話は更にややこしくなります。

中国陶磁器の研究者の中には
この「洪憲年製」磁器はよく出来た贋物だ
という人も存在するのです。

つまり、袁世凱が大統領時代に自分の為に焼いていた
「居仁堂」という磁器に人気がある事を知った骨董商が
そういうストーリーごと作り上げたというものです。

この説にも確かに肯ける点があるのも事実で、
それについては次回説明いたします。

『洪憲年製』磁器の「中の下」級コピー作品。
このように、真っ白な磁器に
彩色で繊細な絵付けが施されたものを『粉彩』といい、
清代以降の官窯の中心的作風となった。

(画像はニセモノです)

 
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2007年11月26日(月)

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