中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第25回
漢時代に生まれたCucumber green

灰が自然に焼き物に降りかかった事から
自然発生的に生み出された釉薬を「灰釉」と呼びます。

この灰を溶媒とする「灰釉」が
1200度以上の高温で焼かれる事によって、
胎土のケイ酸分をガラス化させ、
焼き物にキレイな化粧をさせる事について前回説明いたしました。

しかし漢時代に入ると、
そういう「灰釉」とは全く別の発想の釉薬がもたらされるのです。

それは、「鉛釉」と呼ばれるもので、
その名の通り鉛を溶媒とし、
それに呈色剤として酸化銅や酸化鉄を加え、
緑や褐色に発色させる釉薬の事です。

それは、自然発生的ではなく、人為的に発明されたものでした。
灰ではなく、鉛を溶媒に使う事で、
器物がガラス化する温度を
今までの1200度以上から800度程度まで下げる事に成功したのです。

鉛釉を使った焼き物の中で特に有名なのは
俗にCucumber green(胡瓜の緑)と称される緑色の焼き物です。

日本では「漢の緑釉」と呼ばれ、
1970年代までは壺一個が
当時のお金で数百万円もする高価な焼き物でした。

特に日本人が好んだのは緑色の釉薬が土中で化学変化を起こし、
器物の表面が銀色に被われた所謂「銀化」したものでした。
そして逆に欧米人に人気が高かったのはCucumber greenと呼ばれ、
鮮やかで瑞々しいグリーンを保ったままのものだった訳です。

この辺の鑑賞眼にも侘び寂びを重視する
日本人の特徴が表れていたのではないでしょうか。

それ程人気が高く大変貴重で高価だった
「漢の緑釉」にも大きな変化の波が押し寄せます。

1980年代後半になると、中国の経済開放政策によって、
鉄道や道路など国中のいたる所でインフラ開発が行われ、
その工事中に多くの漢代や唐代の墳墓が発見される事になりました。

そして、そこに明器として埋められていた「漢の緑釉」や
「唐三彩」が日本に大量に持ち込まれ、
それまで貴重で高価だった
それらの陶磁器の価格が大暴落したのです。

まあ、そういう金銭的な価値はともかく、
この漢時代の緑釉の焼き物は中国陶磁器史において
一つの大きな発明だった事、
また素晴らしい芸術性をもった焼き物である事には
間違いありません。

対象的な漢の緑釉
左が欧米人が好む「Cucumber green」
右が日本人が好む「銀化」

山口県立萩美術館、浦上記念館の贓品より
個人寄贈、中国古陶磁器の優品が揃う

http://www.hum.pref.yamaguchi.jp/

 
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