中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第26回
本格的な青磁の芽生え「越州窯」

前回の話に出てきた漢の緑釉のような
ハッキリした色彩の釉薬は陶磁器の世界では邪道と言うか、
あくまでも陶磁器がその芸術性を極めていく道のりにおいては
本流ではありません。

やはり、陶磁器の芸術性を高めていったのは
灰を基本材料にした「灰釉」です。
大まかに言えば、
明時代までの陶磁器における芸術性や神秘性とは
灰の中に含まれる鉱物性の物質をどのように発色させるかによって
決定付けられたと言っても過言でないのです。

灰の中の微量の鉄分を
還元焼成(酸素を極力減らして焼く焼き方)すれば、
釉薬は青色に発色します、つまり青磁の出来上がりです。
逆に、灰釉を限りなく精製していって
中に含まれる鉱物成分を完全に取り除いてしまえば、
透明の釉薬となり、
それを良く精製されたカオリン質の粘土にかけて焼けば
真っ白の焼き物、つまり、白磁の完成です。

白磁はその後、器物に文様や絵画を描くベースの焼き物として
その芸術性を開花させますが、
青磁の評価はそれが発明された太古の昔から現代に至るまで
その発色だけの勝負です。

そういう青磁の世界において、
一番最初に格式化され大量生産されたのが、
ちょうどあの有名な三国志の時代から南北朝時代頃までに
浙江省近辺に点在した窯で焼かれた
「越州窯」と呼ばれる青磁群です。

この頃の「越州窯」の青磁の発色は
まだ還元焼成技術を完全に習得できていなかったと見えて、
青色というよりは茶色に近い発色です。
確かに出来栄えは地味で暗い感じですが、
その落ち着いた色が日本人には好まれたようで
少し昔の日本の骨董の世界ではこの頃の青磁を『古越磁』と呼び、
けっこう高額で取引されていたようです。

(これもやはり1980年代以降の中国古陶磁器の大量発掘により、
価格が随分下がりました)

この越州窯は唐時代以降も栄えますが、
日本においては南北朝時代の頃までの「古越磁」と
唐代以降の綺麗な青色に発色した「越州窯」とを区別して
分類しています。

いずれにしても、
中国において青磁が大量生産され
社会に普及する魁となったのは
この越州窯だった事に違いありません。

南朝時代(5世紀頃)の越州窯の作品

まだ青磁の発色としては未完成だが、
唐時代になると澄んだ青色の釉薬が完成する。

東京国立博物館の贓品より(解説リンク

 
←前回記事へ 2007年12月12日(水) 次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ