中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第29回
大きく花開いた、唐時代 その3

陶磁器史上、唐時代に現れた最も大きな変化とは、
陶磁器の大衆化でしょう。
それまで、雑器のような下手な陶磁器は別として、
念入りに成型され綺麗に施釉された陶磁器を所有する事は
権力者だけの特権でした。

しかし、唐代も中期以降にかかると
陶磁器は民間の生活用品として広く普及するようになります。
その要因となったのは、
やはり政治的安定による唐時代の長期的な繁栄、
そしてそれによる人々の生活レベルの向上でしょう。

正に今の中国において、人々の所得が増え、
携帯電話や自動車の普及率が右肩上がりなのと同じ現象です。
この頃、陶磁器は普通に市場などで売られるようになりました。
唐時代以降、陶磁器が大量生産できるようになったのは、
勿論容量の大きな窯の開発や
様々な焼成技術の進歩もあったでしょうが、
もう一つの大きな原因は職業人としての
陶工の立場の確立だったと思います

晩唐の頃には、邢州窯の白磁、長沙窯の釉下彩磁器、
越州窯の青磁などが大量に焼かれ、民間に流通しています。

この中でも、私のお気に入りは「長沙窯」で焼かれた
釉下彩磁器です。
この「釉下彩磁器」とは読んで字の通り、
釉薬の下に絵付けをした磁器なのです。

今までの陶磁器は胎土の上に
透明や色付きの釉薬をかけて焼くだけでしたが、
この「長沙窯」は成型し乾燥させた胎土の上に
鉱物の顔料で絵や文字を書き、
その上からもう一度透明の釉薬をかけて焼いたものです。
つまり、絵や文字が透明の釉薬の下にあるものですから、
いくら擦ろうが洗おうが
その文様は半永久的に消える事はありません。

今夜の晩御飯、
カレイの煮付けが盛り付けられた
あなたのお皿の文様を見て下さい。
その絵が透明な釉薬の下にあれば、
それは唐時代の長沙窯で発明された技術の
延長線上にある皿なのです。

しかし、この「長沙窯」の面白い所は、
そんな技術的な事ではなく、描かれた絵や文章の自由奔放さです。

絵としては、可愛いバンビのような小鹿や象の絵、
文章なら「この壺たったの三文、
この壺を買って倹約すればお金はすぐに貯まる」などと書かれていて、
今までの格式高い中国古陶磁器とは
随分雰囲気が変わったと実感させるものなのです。

長沙窯二彩耳壺

唐時代の長沙窯で自由奔放な作風が生まれました。
この壺は地味ですが、
デザイン的には整ったものだと思います。

 
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