中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第43回
兄弟喧嘩から生まれた「哥窯」

今回は宋の五大名窯の一つである
「哥窯」について説明いたします。

台湾故宮博物院や上海博物館などには
多くの中国古陶磁器の名品が展示されていますが、
最初に中国の古陶磁器に触れた日本人の多くが好きになるのが
「哥窯」の焼き物です。

その理由は多分「哥窯」の焼き物は非常に個性的で、
その作風が他の青磁などとは大きく違っている為に
印象に残りやすいからと思います。

「哥窯」の焼き物は陶磁器的には
青磁の範疇にはいるものですが、
多くの「哥窯」が白に近い色に発色している事、
また胎土がレンガのようなこげ茶色である事、
そしてヒビが一面に入る事など
他に類のないユニークな作風となっています。

そして特に目を惹くのは
釉薬に無数のヒビ(貫入)が入っている事です。

このヒビ(貫入)をよく見ると、
太いものとその間を走る
更に細いものの二種類ある事に気付きます。
中国では、太いヒビを「銀糸」
細いヒビを「金糸」と呼びますが、
実際にヒビの色も金色と黒銀色なのです。

では何故こんなヒビだらけの陶磁器ができたかと言うと、
こういう話が明時代の文献に残されています。

南宋の初期、
中国の龍泉県には章一と
生二と言う二人の腕の立つ陶工がいました。
二人は実の兄弟でしたが、
特に兄の章一の作る青磁の評判は高く、
弟の生二はそれに嫉妬を感じていました。

「兄の焼く青磁はどうしてあんなに素晴らしいのか?」

疑問に思った弟の生二は、
まだ完全に焼き終わっていない窯を開けて
内部を覗き込みその秘訣を盗もうとします。

しかし、窯を開けた事で一気に外気が流れ込み、
温度変化に敏感な焼き物は本来焼き上げたかった姿とは全く違う
ヒビだらけの変わり果てた姿になりました。

その失敗作を見つけた兄の章一は
そのヒビに深い味わいがある事に気付き、それを再現します。
そして兄の窯は更に人気となりました。

弟の生二もその後修行を重ね
たいそう綺麗な青磁を焼く「龍泉窯」という窯を創設します。
兄の作った「哥窯」は
僅かながら残された作品が存在するのですが、
未だにその窯跡すら発見されておらず、
「幻の陶磁器」と呼ばれます。

対して、弟が作った「龍泉窯」は
南宋から明時代にかけて国内国外に流通した
膨大な量の青磁を焼いた「中国一の青磁窯」となるのです。

兄が作った「哥窯」の作品

台湾故宮博物院 解説リンク
ヒビ(貫入)の拡大図 画像リンク

 

弟が作った「龍泉窯」の作品

山口県立萩美術館・浦上記念館収蔵品より
作品解説ページ

 
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2008年1月18日(木)

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