第45回
古陶磁器 鑑定の実際・・
実際の古陶磁器の鑑定は、
大まかに言って「科学的判断」「状況的判断」「芸術的判断」
の三つの分野について行います。
まず「科学的判断」とは
その陶磁器に使われている胎土や
釉薬がその当時の本物と同様の物であるかなどを調べる事です。
また、究極の科学的鑑定の手段として、
その焼き物の胎土を用いて分析する「熱ルミネッセンス分析」
という方法もありますが、
誤差が大きい上に、
器物を傷つけるので一般的ではありません。
「状況的判断」とは、
その陶磁器が見つかった場所、売られていた場所、
またその価格、また同様の品がいくつも並んでいた
などの情報から真贋を推測するものです。
そして、「芸術的判断」ですが、
やはり陶磁器は芸術品ですので、
私は古陶磁器の鑑定において一番重要なのは
芸術的な観点から分析する事だと思います。
陶磁器には、作った陶工の技術がそのまま表現されます。
そして、その時代その時代の特徴がはっきりと出ます。
それらを全て真似する事は極めて難しく、
どうしても贋作には似せよう似せようとする
厭らしさが滲み出たりする事が多いものです。
それに昔の陶工は同じ絵なら同じ絵ばかりを数年、数十年、
描き続けていた訳ですから、
一朝一夕にその筆使いなどの技術は身につかないのです。
しかし、少しややこしい話ですが、
上記の判断では完全に駄目だとなった古陶磁器でも
古い時代に特別な要因で作られたような
僅かな「例外品」も存在します。
ただし、そういう作品は人気の高い本流の作品とは違い、
そんなに高い価値はありません。
ですから、例えそういう例外品を「贋作」と鑑定されても
あまり心配する必要はありません。
問題なのは、上記の三つの分野での判断を
全てクリアしてしまうような、
精巧と言うか究極の贋作です。
過去、世界中のあらゆる芸術分野において、
数々の精巧な贋作による事件が起こっています。
贋作事件は小説の題材などになりやすいので、
誰でも一回はそういった本を読んだ経験はあるでしょう。
そういう贋作事件の中でも、
私にとって印象深い「贋作」に関する事件が過去にありました。
岸和田市主催「東洋の官窯陶磁器展」での贋作騒動です。
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南宋時代、吉州窯の天目碗
このような素朴で流暢な絵付けほど、
簡単に真似できない。
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