第50回
お茶がある・・
また、ちょっと本来の中国古陶磁器の話からは逸れますが、
今回は日本における
中国古陶磁器の評価についての話をしたいと思います。
中国古陶磁器への評価や好みは、
中国や香港、欧米などの
各国のコレクターによって多少異なりますが、
基本的に希少性プラス芸術性というところに行き着きます。
しかし、日本には焼き物始め
芸術品全般に対して存在する価値の判断基準があります。
それは「お茶があるか?ないか?」という事です。
つまり簡単に言えば
「茶道に使えるか?どうか?」という意味です。
特に中国古陶磁器はどちらかと言えば、
日本のお茶の世界で最も重要とされる
「侘び寂び」の心に通じるような品が少ない訳です。
例えば、一分の隙もない宋時代の鋭い作風の陶磁器、
また茶室に入りきらない程大型の元時代の青花の花瓶、
そして煌びやかで派手な明や清の色絵磁器など・・
こういう品は国際的にいくら高い評価されていても、
過去の日本においては不当に低い評価が与えられてきました。
それに反して、
「お茶がある」中国古陶磁器は
驚くほどの高額で取引されています。
まずはそのもの「茶碗」に使えるもの。
欧米人になどは振り向きもしない、
宋〜清時代の雑器のような汚い茶碗でも、
日本人はそこに
「侘び寂び」を感ずれば高額で奪い合いをしました。
そのように、日本人に特別人気のあった中国の茶碗の中で
日本の国宝に選ばれているものがあります。
その代表は宋時代に今の福建省周辺にあった「建窯」で焼かれた
天目茶碗の中でも天下無双の神品と呼ばれる「耀変天目」です。
「耀変」とは本来「窯変」と書きますが、
その名の通り、窯の中で偶然化学変化した陶磁器という意味です。
この建窯の「耀変天目」は漆黒の茶碗の内側に
虹色の斑紋が無数に浮かび上がっているのです。
通常、単に黒色に焼き上がるはずの茶碗のはずが、
窯内でどういう科学変化が起きたのか
それはそれは不思議な光景を茶碗の中に見る事ができます。
もし、この茶碗が市場に出れば
数十億の価値があると言われているのも頷けます。
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