中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第52回
宋の五大名窯「鈞窯」

「鈞窯」と書いて、キンヨウと読みます。

宋の五大名窯の一つに数えられる
この「鈞窯」と呼ばれる焼き物は、
他の名窯の作品と少し異なる点があります。

どういう事かと申しますと、
他の名窯はある時代ある地域で焼かれた作品群を特定して
その名前が付けられていますが、
「鈞窯」に限っては時代や焼かれた場所に関わらず、
同じような作風の焼き物全てをひっくるめて
この「鈞窯」という名前で呼ぶ事が一般的になっているのです。

何故そうなったかと言えば、
もともと「鈞窯」は北宋時代に
今の河南省付近で誕生した焼き物でしたが、
その後各地方また各時代においてそれが模倣され、
大量の「鈞窯風」の作品が焼かれ続けたからです。

では何故、各地方また各時代に模倣され焼かれ続けたかと言えば、
その作風が特徴的且つ大変魅力的であっただけでなく、
どのような土でも
簡単に発色し易いなどの理由があったと思われます。

ですので、狭義に「鈞窯」と言えば、
北宋時代河南省で焼かれ、
北宋独特の鋭い作風の器形に
澱青釉(透過性の少ない青磁釉)がかけられた
神秘性のある焼き物だけを指します。

本来はこの焼き物だけが正式な意味での「鈞窯」なのですが、
広義に捉える場合は北宋から金時代、元時代、明時代に至るまで
その作風の作品全てを「鈞窯」と呼んでいます。

そして更に、
清時代から現代に至るまでその作風の焼き物は焼かれ続けます。
また、日本においても「鈞窯風」の焼き物は広く普及しています。

下の画像の器は、
先日結婚式の引き出物としていただいた品ですが、
宋時代の作風を脈々と引き継いでおります。

そのように大変広く普及してきた「鈞窯」ですが、
やはり評価が高いのは北宋時代のものになります。
価格的に言えば、
北宋時代の名品になれば確実に数千万円の値が付きます。

芸術的な面から「鈞窯」を評価すれば、
万人を魅了するのはその釉薬(澱青釉)の幽玄さでしょう。

通常の青磁釉よりケイ酸分が非常に高い独特の釉薬をかけ、
高温で焼き上げたその美しさは
オパールに例えられる事が多いのですが、
光を微妙に屈折させ、独特の世界を醸し出します。

また「鈞窯」の特徴の一つとして、
器物の一部に銅を発色剤として塗り、
その上から青磁釉をかけて焼き、
青色の中に赤紫色が浮かぶといった発色を狙った
紫紅釉という技法もあります。

北宋時代の一部の汝官窯風「鈞窯」を除けば、
一般的にこの赤紫色が入っているものの方が評価は高くなります。

そう言った意味から、
我々コレクターが気を付けなければならないのは
「鈞窯」と言ってもピンキリ、
焼かれた時代とその芸術性の違いによって、
数千円から数億円までの価格差があると言う事です。

知人の結婚披露宴の引き出物で貰った
「鈞窯風」の碗


金時代の鈞窯の作品(正面)


金時代の鈞窯の作品(底面)

鈞窯の作風は、
この例のように天青色と赤紫色の混じったものと
天青色だけのものがある。

山口県立萩美術館収蔵品 リンク
山口県立萩美術館
作品解説ページ

 
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2008年2月8日(金)

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