中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第55回
宋の五大名窯「南宋官窯」その2

南宋時代には、多くの名窯が生まれそして大きく栄えます。
しかし一部の精品を除き、
それらはあくまでも大衆品や
輸出品として大量に生産されたものでした。

そんな中、歴代の皇帝が求めたように
南宋時代の皇帝も皇室専属の陶磁器を焼く窯を作らせます。

それが「南宋官窯」と呼ばれるものです。
「南宋官窯」が追い求めたものは、
歴代の皇帝が追い求めたのと同じく「青」の焼き物です。

中国人が青磁を高貴なものとして特別に扱うのは、
それが「玉」(翡翠)を模して焼かれているからです。
太古の昔から「玉」には魂が宿っているとよく言われますが、
「玉」に対する思い入れの強さは
現代の中国人にも脈々と引き継がれています。

そういう意味において「南宋官窯」の焼き物は
「玉」を追い求めた青磁として、
その到達点にあるものだと言えるでしょう。

「南宋官窯」で焼かれた青磁の特色としては、
「玉」を表現する為に
様々な試みが為されていることが挙げられます。

色々な胎土を用い、釉薬を工夫し、
焼き方を研究し、究極の一品を作る事に成功します。
それは、今までの常識を破り、
わざわざ黒い色に発色する土を用いて焼いた青磁です。

黒い胎土を用いた上に、それを極限まで薄く成型し、
青磁の釉薬をどっぷりと厚くかける事によって、
非常に深みのある青磁の色を得る事に成功しました。

なんと「南宋官窯」の破片を見ると、
土の部分よりも釉薬の部分の方が
倍以上厚くなっているのには驚かされます。

それを分かり易く例えれば、安物のトンカツの場合、
肉よりも衣の方が厚いのと同じ現象です。

そして、陶器質の胎土に厚めにかけられた釉薬は
その収縮率の違いから焼かれるとひび割れを起します。

これは、失敗ではなくわざと表面にひび割れを作って
深みのある青色を表現しているのです。

このように究極の青磁を目指して
創意工夫を重ねていく宋時代の陶磁器文化でしたが、
そういう繊細な芸術性は
野蛮な元王朝によって滅ぼされる事となります。

南宋官窯 青磁碗

黒色胎土に青磁釉をかける事で
深みのある青色を生み出した。

東京国立博物館 収蔵品解説リンク

 
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2008年2月15日(金)

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