第57回
私のお気に入りの一品
今回は私自身の中国古陶磁器コレクションの中で
気に入っている品を紹介いたします。
私の中国古陶磁器コレクションは、
北京滞在中に自分の足で集めた品や日本の骨董商から買った品、
また中国本土の拍買会や国際的なオークションで
競り落とした品などから成り立っています。
価格的に言えば、それこそ10元のものから、
ペトロチャイナの株(暴落後)が10万株以上買える金額のものまで
色々ありますが、
その中には価格に関係なく
やはり自分のお気に入りとお気にいらずの品が存在します。。
今回はその中「お気に入りの品」の中から
「紫定」と呼ばれる焼き物を紹介します。
「紫定」とは以前のコラムでも紹介いたしました
「定窯」の作品の一種です。
「定窯」では白い色の陶磁器
いわゆる「白磁」の作品が主に焼かれ、
その白磁によって定窯は有名になりましたが、
ごく少数「白以外の色」の焼き物も焼かれていました。
それは、黒色の「黒定」、柿茶色の「紅定」そして、
紫に近い茶色の「紫定」などです。
何故、白磁の名窯である「定窯」において、
このような正色ではない焼き物が焼かれたかと申しますと、
当時流行したお茶によく合うということで
黒色の天目碗が人気を博している影響を受けて、
白磁だけを焼いていた「定窯」でも
その流行を追っかけたのだと思われます。
ですので、「黒定」「紅定」
私の持つ「紫定」など白磁以外の「定窯」の残存数は非常に少なく、
いわゆる珍品の扱いとなり、
それなりの価値があるものとされています。
そういう珍品の中でも、
黒色の「黒定」、柿茶色の「紅定」などは
博物館やオークションでたまに見かけたのですが、
私は紫色をした定窯の作品を見た事がありませんでした。
書物では茶色の濃い色の焼き物を
「紫定」と名付けたと書いてありますが、
茶色の焼き物に紫という名前を付けるのは
おかしいような気がしていました。
そんな中、
たまたま北京のある業者の耳に
中国河北省の「定窯」の窯跡付近で
「紫定」の作品が発掘されたという知らせが届きます。
私は胸を高鳴らせながら彼の帰りを待ちました。
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「紫定」と呼ばれる珍しい品
窯傷があるので、
正規品となれず破棄されたものだと推測。
そのまま、他の廃棄品と一緒に埋められたものが
約1000年後に偶然発掘された。
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