第58回
「紫定」と呼ばれる焼き物
白磁の名窯である定窯において僅かに焼かれてたとされる
「紫定」と呼ばれる焼き物。
その珍品が発掘されたというニュースを聞きつけ、
ある骨董業者は、
即日河北省までその「紫定」を買い付けに走ります。
そして、その業者が北京に戻るのを待ち構えていた私が
即金でその「紫定」を買い取るのです。
この「紫定」の碗は内側は「定窯」独特の牙白色、
外側だけに鉄釉を塗り、茶褐色に焼き上げています。
そして、何より私が魅了されたのは、
茶褐色のある部分がほんの少しムラサキ色に見える事でした。
「やはり、目で見てムラサキ色に見える紫定の焼き物が
存在したんだ・・」
私はこの焼き物を手に出来た偶然を喜びました。
それと、土中に長期間埋められていたせいもあり、
器物の表面に何やら怪しげな模様が浮び上がり、
じっくり見ていると器面が山水画のようにも見えてくるのです。
こういう味わいこそ
先日のコラムで書いた「お茶があるない」の世界です。
やはり、茶道を嗜む知人に見せた所、
お茶にピッタリのサイズとその寂れた感じが相まって
「売ってくれ」「いや、売らん」のやり取りになりました。
この碗は世界に一つしかありません。
どうしても売って欲しいという方は
メールでのお便りお待ちしています。
ただし、最低落札価格は
ペトロチャイナの株(暴落後)が2万株分です。
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「紫定」の発色
画像では分かり難いが
光の当たり具合によっては少し紫色に見える。
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