第61回
私のお気に入りの一品
今回の私のお気に入りの一品は
「唐時代の取っ手つきカップ」です。
これは、決して高価な品ではありません。
日本でも数万円で手に入るありきたりの品です。
では、何故に気に入っているかと言えば、
少し話は長くなります。
私は高橋克彦という小説家の空想作品が好きで
昔よく読んでいたのですが、
彼の歴史小説や浮世絵を題材にした小説から
「昔の人の生活を色褪せたモノクロ色に捉えるな、
逆に現代人よりも昔の人の方が感性が鋭く、
お洒落な部分や生活を楽しむ部分があった」
といった考え方がある事を学び、
自分なりに凄く納得した想いがありました。
中国の古陶磁器についてもこういう考え方がよく当て嵌まります。
中国も明・清時代に入りますと、
陶磁器における芸術性も規格化してしまって、
面白みがなくなります。
それよりも、古代から唐や宋時代辺りまでの作品の方に
当時の人間の感性などが素直に反映されて
面白みがあると私は思います。
唐時代はシルクロードを通じて
西アジア諸国との交易が栄えました。
当時の人々は西から運ばれてくる色々な品物が
まぶしく見えた事でしょう。
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唐時代 白磁把手杯 |
このコップは、ペルシャ辺りで作られ
シルクロードを通って運ばれてきた
銀製品の形を模したものだと思われますが、
舶来品に憧れを持ちそれを模倣するといった行動は
現代人と何ら変わりがありません。
非常にセンスの良い形をした杯ですので、
今でもコーヒーを入れて飲みたくなります。
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