中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第65回
木の葉を器に焼き付けた?

まず、画像を見て下さい。

吉州窯木の葉天目碗

黒いお碗の中に「木の葉」が浮かび上がっていますね。

この焼き物は南宋時代に栄え、
江西省の吉安県に窯跡が発見された
「吉州窯」で焼かれた木の葉天目碗です。

現在、世界中に残存する吉州窯の
木の葉天目碗の数は非常に少なく、大変貴重な焼き物です。
そして、その焼成法についても定説がないとされ、
大変謎の多い中国古陶磁器とされています。

では、この焼き物、
一体どうやって作られたと思いますか?
本物の木の葉を器物に貼り付けて焼いたのでしょうか?
でも焼成温度は1200度にも達します、
木の葉なんて一瞬で灰になりますよね。

それでは、当時の陶工が筆などを用い
精密に木の葉を器物に描いたのでしょうか?
これも、ここまでリアルに葉脈まで書き写せませんよね。

正解は、やはり本物の木の葉を器物に貼り付けて焼成したのです。

以前のコラムでも説明しましたが、
焼き物の発色は胎土や
釉薬の中に含まれる金属成分によるものですので、
例え木の葉が焼けて灰になったとしても、
その灰に含まれる金属成分により、
木の葉の形跡がそのまま残るという現象が起こる訳です。

化学的に言えばそういう単純な事ですが、
現実にこの作品のように
ハッキリと葉脈まで浮き出た焼き物を作る事は
容易ではありませんでした。

多くの近代陶工達も
「木の葉天目」の再現に情熱を燃やしましたが、
上手く再現できるようになったのは、
焼成温度を
完全に管理できる電気窯が普及してからの事となりました。

ですので、この作品のように綺麗に木の葉の形が現れた焼き物は、
南宋時代においては偶然の産物と言うか、
莫大な数の失敗作から生まれた
大変貴重な焼き物だったに違いありません。

この「木の葉天目」昔のニセモノは
筆で簡単に葉っぱを書いただけのものでしたが、
最近ではニセモノのレベルも上がり、
本物と同じ手法で焼かれるようになりました。

画像の「木の葉天目碗」は
日本の重要文化財に指定される程貴重なものですが、
最近中国に行き、
たった数万円で重要文化財クラスの
「木の葉天目碗」を買って帰ってくる人が増えていますので、
要注意。

 

このように、はっきりと葉脈まで写せるようになるまでには、
大変な試行錯誤があったと思われる。

大阪市立東洋陶磁美術館所蔵 重要文化財
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2008年3月10日(月)

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