中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第67回
私のお気に入りの一品

今回の私のお気に入りの一品は明時代末期、
万暦期の『五彩龍文盤』です。

典型的な万暦赤絵の色使い

この明時代万暦期の彩色磁器は通称「万暦赤絵」と呼ばれ、
世界中のどこよりも日本において
一番高く評価されている不思議な中国古陶磁器です。

とにかく「万暦赤絵」は昭和を通じて
日本人にとても愛されてきました。
この万暦赤絵は稚拙な絵付け、
そして官窯と思えないほど派手な色使いも目立ち、
もともと世界的な評価はそれほど高くない焼き物でした。

しかし、大正から昭和初期の日本の文化人達によって、
その作風が評価されました。
中でも、画家梅原龍三郎が保有した万暦赤絵の花瓶は有名です。
彼は、自らが所蔵する万暦赤絵の花瓶に薔薇を放り込み、
豪快で華やかな作品を描きあげています。

それほど、万暦赤絵が持つ色彩の生命力は訴えるものがあり、
志賀直哉は「万暦赤絵」という
そのものズバリのタイトルで小説を書いているほどです。

万暦赤絵の作風を表現する時には
「絢爛・濃麗」などと言う言葉を使いますが、
それと共によく用いられるのが、
「放埓・退廃的・粗放」など
褒め言葉とは思えないような言葉です。

つまり、日本人はそれまでの明時代の統制の効いた官窯作品、
つまり明代初期の成化や
宣徳期の計算され乱れのない陶磁器などよりも、
明時代もそろそろ崩壊に向かう万暦期後期のものを好みました。

それらは、作風が乱れ色使いも派手で、
中には器形が歪んだり、
陶磁器の縁のあたりが剥げ落ちたもの(虫食いと呼ばれる)
までありましたが、
そういうものの方が断然人気が高かったのです。

つまり、日本人は
明時代が終焉を迎えていく中で焼かれた万暦赤絵に
「滅びの美学」のようなものを感じとっていたのでしょう。

万暦時代の銘款
万暦期後半には明朝衰退の兆しが・・

その後、万暦赤絵は日本人の人気から
高額で取引されるようになり、
今では国際的な評価も日本の評価に追いつきました。

画像の小皿は割れていますが、
完品ならやはり小型車一台は買える価格で取引されます。

 
←前回記事へ

2008年3月14日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ