中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第97回
小粒でもピリリと高い焼物

元時代の1m以上もある大きな焼物が1億円するのと、
手のひらに乗るほどの小さなお碗が
1億円するのとでは同じ1億円でも意味が違います。

中国の焼き物の中で小さいくせに
ベラボウな価格がつく焼物があります。
それは明の成化期に焼かれた「成化豆彩」と呼ばれる焼物です。

この焼物は一般的に「豆彩」と呼ばれますが、
「闘彩」とも呼び表される事もあります。

もともと、その色彩の基本をなす色が
鮮やかな豆の緑色に近かったという事から
「豆彩」と名づけられたのですが、
図柄を彩る様々な色がお互いに闘っているようだという事から
「闘彩」と呼ばれるという説もあるようです。

まぁ呼び方など、どちらでも良いのですが、
とにかくこの「成化豆彩」は中国3000年の陶磁器史の中でも
最高の部類に位置する稀少で高額な焼物です。

稀少さで言えば、
現在世界中に残された品数は30〜40個ほど、
殆どオークションなどの流通に乗る事はありませんが、
もし一級の「成化豆彩」が出品されれば
現在では億の価値は下らないでしょう。

そんな「成化豆彩」の中で、
最も価値が高いとされているのが「鶏缸杯」
いわゆる「チキンカップ」と呼ばれる焼物です。

この焼物の素晴らしさを語るには、
まずその素地となる白磁の素晴らしさを語らなければなりません。

実際に濡れているのかと思わせるほど潤いがあり、
且つ瑞々しい乳白色の素地は
正に「豆彩」の色彩を際立たせる為に
改良を重ねた末に完成されたものだと言えるでしょう。

その素晴らしい素地に当時考えられる
全ての顔料と技術を組み合わせて完成した色彩を
「余白の美」を生かしながらも
丹念に塗り重ねて焼かれたのが「成化豆彩」なのです。

そして豆彩の遺品は愛玩の対象となるような小さな作品ばかりです。
実際に食器として使用するような大きな器はありません。

何故かと言えば、
この「豆彩」はじめ釉上彩と呼ばれ
釉薬の上に文様を描く手法で焼かれた陶磁器は、
実際に食器として使用すれば簡単に色が剥げ落ちてしまうからです。

成化豆彩の中でも最も貴重な「チキンカップ」
たった直径8cmの杯一つに豪邸が建つ程の価格がつきます。


台湾故宮博物院収蔵品
解説リンク
 
←前回記事へ

2008年5月23日(金)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ