第107回
ハイハイ天さん、天さんデス
○今回の依頼者
名前 李 忠
年齢 38歳
出身 北京
○依頼文
はじめまして、いつもこのページを楽しく見ています。
私は現在は帰化して日本に住んでいます。
骨董を集める事を趣味にしています。
鑑定して欲しいものは中国の友達から買いました吉州窯の茶碗です。
宜しくおねがいします。
 |
金彩の施された南宋吉州窯の碗 |
 |
裏を見ると紛れもない本物だが・・・ |
○鑑定結果
これは珍しい焼物ですね。
この品物は、ニセモノとも本物とも言えません。
『半真半贋』とでも言いましょうか・・
つまり、焼物自体は紛れも無い
本物の南宋吉州窯の黒釉茶碗なのですが、
金色で描かれた文様部分だけは現代作なのです。
何故このような品が作られたかと申しますと、
ごく僅かに南宋時代の吉州窯で
依頼品のような金彩入りの黒釉茶碗が焼かれていて、
それらはその希少性から大変高額で取引されているからです。
それと反対に、金彩はおろか
何の文様もない南宋吉州窯の黒釉茶碗は
いくらでも残されています。
金額にすれば数千円も出せば手に入ります。
そのような状況を考えれば、
少し頭の働く人なら
「古い茶碗に金の文様だけ付け加えて高く売ってやれ」
と考えても不思議はないでしょう。
ちなみに、本物の南宋吉州窯の金彩入り黒釉茶碗の金彩部分は
もっと緻密で丁寧な仕事となっています。
この茶碗の金彩部分はあまりにも雑ですよね。
○結論
古陶磁器贋作の世界では、
本物の古い焼物に手を加えてより高く売ろうとする事があります。
その代表は「後絵」と呼ばれる手法です。
例えば、何の文様もない白磁に
綺麗な図柄を描き足して
人気のある色絵作品に仕立ててしまうのです。
今回の手法もその範疇の一例と言えます。
|