中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第116回
中国料理

今回も「中国古陶磁器に盛って映える料理」略して、
中国料理のコーナーです。

今回は、私が食べた中でも
最高級の宮廷料理の話を書こうと思ったのですが、
窓の外のどんよりとした曇り空を見て気が変わりました。

今回は「職工餐」つまり、
まかない料理について書く事にします。

私は以前、北京でレストランを経営していたのですが、
毎日の昼食は中国人社員に混じって
彼らと同じまかない料理を食べていました。

最初は、同じ窯の飯を食って
社員との連帯感を深めようなどという
つまらない策略をもって始めた行為でしたが、
三日もしないうちに
「まだかぁ?まだかぁ?メシまだかぁ?」
と言っては茶碗を叩きながら
まかない料理を催促するようになっていました。

なぜ、そうなったかと言えば、
まかない料理がとっても美味かったからです。

私のレストランは四川料理をメインにしたものでしたので、
調理師は全員四川人です。
いや、四川人のはずでした。

はずでしたと言うのは、
四川の重慶などから
本格的な四川料理の調理師を呼ぶと給料が高いので、
中国側の総経理(CEO)が私には内緒で
四川人ではなく貴州人の調理師集団を雇用していたのです。

今流行の「食品偽装」ならぬ、「調理師偽装」です。

貴州料理と四川料理は辛くて良く似ています。
しかし、私は自分の店で食べる四川料理に
何か本格的ではない違和感を感じていました。

ただ、店で出している料理に対する違和感とは裏腹に、
毎日出されるまかない料理には大変満足していました。

基本的に全て大変辛い料理なのですが、
食材や油の使い方などとのマッチングが良いせいか、
北京の気候の中で食べる
貴州人作のまかない料理は大変美味しいものでした。

基本的にまかない料理なので、
食材は粗末なものを使います。
粗末な食材を劇的に美味しくする犯人は火力と油と香辛料です。

火が出るほど熱された鍋に、
多めの油と共に豆板醤や唐辛子を放り込むと、
素晴らしい香りが立ち昇ります。
そこにキャベツや白菜やナスや豚肉を入れて強火で炒めあげます。

出来上がった料理には大量の真っ赤な油の層が出来ますが、
それは見た目ほどしつこくなく、
北京のかさかさご飯にビックリするほどよく合います。

四川人の代用として雇われた貴州人でしたが、
彼らのまかない料理は本当に心に残るものでした。

ちなみに、いくらまかない料理が美味しく作れても、
肝心な店の料理の評判が思わしくなかった貴州人調理師軍団は
1ヶ月程で全員クビとなりました。

そして、次に雇われた本物の四川人調理師が作る四川料理は
素晴らしく、お店は繁盛いたしましたが、
彼らの作るまかない料理には感動はありませんでした。

世の中、上手くいかないものです。

 

当時のまかない料理の一つを再現してみました。

紅油牛肉豆腐
 
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2008年7月7日(月)

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