第122回
中国料理
今回も「中国古陶磁器に盛って映える料理」略して、
中国料理のコーナーです。
今週は、あの有名な中国高級食材「上海蟹」についてのお話です。
私は多くの日本人の方が共有する上海蟹感について、
どうしても言いたい事があります。
「上海蟹、上海蟹と騒ぐから食べてみたけど、
あんな小ちゃな蟹、食べる所も少ないし、
身も味がないし、高いだけでどうして皆ありがたがるか分からない」
こんな声をよく耳にします。
それは、東京や横浜の高級中国レストランでもそうですし、
本場の上海においてもそうです。
「上海蟹なんて美味しくない」
と一度でも思った事のある人全員に言います。
「あなたの食べた蟹は本物の上海蟹ではございません」
上海蟹はシナモズクガニというモズクガニの一種ですが、
上海蟹を厳格に定義すれば、
9月〜11月の間に蘇州近郊の陽澄湖や
無錫太湖などいくつかの特定地域で採れた蟹だけを指します。
 |
最近では本物の上海蟹には
産地証明のタグがついている
(ただし、タグの偽造も頻繁に行われているが) |
他の地域で獲れたものや簡単に養殖されたもの、
また捕獲後何週間も経ったものも上海蟹とは呼んではいけません。
あくまでも、それは「似て非なるもの」です。
上海蟹と全く同じ形のモズクガニは日本でも獲れますし、
中国船から逃げドイツの港などに大量発生している上海蟹も
一応上海蟹です。
でもそれらを食べても上海蟹の味はしないでしょう。
 |
これが上海蟹(シナモズクガニ) |
 |
こちらが日本に住むモズクガニ |
上海蟹の美味しさの全ては「ミソ」にあります。
雌なら卵巣、雄なら精巣です。
身なんて食べる必要はありません、
身の部分は近所の子供にやるか、
後で捌いて「蟹粉豆腐」の材料にしたら良いのです。
この独特の「ミソ」を育てるのが、
陽澄湖などの栄養分たっぷりの泥質の水底です。
日本のモズクガニのように清流に住んでいては、
美味しい「ミソ」など育ちません。
つまり、「上海蟹なんて美味しくない」
という感想を持っている人は、
本当に美味しい上海蟹を口にしていないだけなのです。
来週も引き続き「上海蟹」の秘密について、書きたいと思います。
|