中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第141回
私のお気に入りの一品

今回のお気に入りの一品は北宋時代の白磁輪花小盤です。

「北宋様式」と呼ばれる、 薄作りで端整な造形美

まず何が気にいっているかと言えば、
このお皿は対(2枚)残っていたという事です。

ご覧の通り、と言うか写真以上にこのお皿は薄造りで
ちょっとした衝撃で割れてしまいそうです。

それが北宋の時代からですから、
ちょうど1000年間も割れずに存在していた事自体
奇跡的だと言えるでしょう。

中国古陶磁器の世界では「北宋様式」という言葉をよく使います。
それは北宋時代に生み出された独特の様式美で、
その特徴は研ぎ澄まされたその造形にあります。

「北宋様式」の造形について述べられる形容詞は
「触れば手が切れそうな」とか
「紙のように薄い」など
とにかくエッジの効いたシャープなものです。

そして、そのような「北宋様式」を一番強く表現しているのが
今回取り上げた「白磁」です。

見ての通り、
白磁は色が真っ白な上に何の彩色も絵付けもいたしません。
という事で、
陶磁器としての評価はその造形だけに絞られる訳です。

今回の作品は北宋時代の初期、河北省で焼かれた「定窯」
またはその周辺窯の初期の作品だと思われます。

北宋時代初期の作品は、
まだ焼成の燃料として「薪」が使われていました。
「薪」を使って焼けば、
還元焼成になりやすく
その焼き上がりは白色または若干青みがかった白色になります。

しかし、その後中国の北方地方で「薪」が不足するようになり、
代わりに「石炭」が使われるようになります。

石炭は火足が短く酸化焼成となりやすい為、
焼き上がりは若干黄味がかった白色となりました。

ところが、その黄味がかった色が「象牙」に似ていた事から、
定窯の白磁は今まで以上に売れるようになりました。

正に「災い転じて福となす」です。
そして今では、定窯の白磁は宋の五大名窯に数えられています。

北宋時代のこのような薄作りの磁器が
対で残っているのは珍しい。
 
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2008年9月3日(水)

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