中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第146回
ハイハイ天さん、天さんデス

○今回の依頼者

[ペンネーム] フリッパー
[性別・年齢] 男性 58歳
[年収]    1500万円

○依頼文

香港や天津の居留民団長等を務めた祖父が
戦前に日本に持って来た物です。
鑑定宜しくお願いいたします。

それと一つ質問ですが、
第6回連載の記事に有る写真と同様の鳳凰と龍が書かれた五彩で
底に大明万暦年製の銘が有る水注が有りますが
龍の爪が4本というのは銘と合わないですか。

一見綺麗な青磁だが、造形の甘さが目立つ

景徳鎮官窯の純白な胎土ではない

 

○鑑定結果

まず、半年以上前のご依頼にも関わらず、
掲載が大変遅れ申し訳ございませんでした。

この焼き物には数か所の矛盾点があります。
まず、この焼き物の原型は、
南宋〜明時代中国一の青磁の生産地として栄えた
龍泉窯にあります。
ただし、ご依頼の品はその龍泉窯の青磁を更に洗練させ
発展させた清朝乾隆官窯の青磁をさらに模倣した製品です。
つまり模倣の模倣です。

しかし、話はここで終りません。

器物の裏面に「大清乾隆年製」との掘り込みがありますが、
明らかに清朝乾隆官窯のものとは違いますし、
さらに胎土も景徳鎮独特の真っ白なカオリン土と違います。
つまり、この作品は清時代以降の景徳鎮製でもないのです。

大清乾隆年製の名款
本物(上)に対して、倣品(下)はあまりにも甘い

ではどこで焼かれたものかと申しますと、
実はこの焼き物の原型が焼かれた龍泉窯があった場所に
復活した新龍泉窯で焼かれたものです。
つまり清時代以降の近代においても
浙江省龍泉窯では工芸品として青磁を焼き続けていますので、
依頼品はそういう範疇の品であると思います。

つまり、ややこしいのですが、
宋〜明時代の龍泉窯の青磁を手本に
景徳鎮官窯が模倣した焼き物を、
後代復活した新龍泉窯が再度模倣したと言うことでしょう。

いづれにしても、いつの時代のものか?と問われれば、
そんなに古いものではなく。
価格的にも、数万円ほどで手に入る品物だと思います。


○結論

簡単に言えば、こういう事です。

昔自分のおじいちゃんが焼いた焼き物を
たいそう気に入った近所の金持ちが
それを真似た焼き物を作らせました、
その後おじいちゃんの窯を復活させたあなたが
「この程度のものなんて簡単に作れるよ」
とその金持ちの焼き物を簡単に作ってしまいました。

あと、大明万暦年製の銘が有る水注が有るとの事ですが、
ぜひ写真送って下さい。
万歴赤絵に関しては、
一見すれば本物か偽物か判断できます。

 
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2008年9月15日(月)

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