中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第147回
私のお気に入りの一品

今回、私のお気に入りとして紹介するのは
「耀州窯白黒文合子」です。

唐時代の作品とは思えない斬新なデザイン
古陶磁器の合子では蓋と本体が揃っている事が重要

この焼き物は唐時代に耀州窯で焼かれたものです。

耀州窯は北宋時代に青磁窯として名声を馳せた名窯ですが、
この窯の創生期である唐時代の頃には
一時期活発に唐三彩を焼いた以外、
白磁や黒磁など地味な焼き物を作る一地方窯として
活動していたようです。

ただし、そのようなモノトーンの焼き物の中に、
ハッとするようなデザインの焼き物が含まれているのが
唐時代の耀州窯作品の特徴だと私は感じています。

この作品も白い焼き物の上に
大胆に濃褐色の釉薬で文様を描いています。

唐時代の耀州窯ではこの作品のほかにも、
白・黒・茶それだけの色を生かして
斬新さを感じさせるデザインの焼き物が焼かれています。

まるで、その頃大流行していた「唐三彩」に反抗するかの如く、
地味な色使いの中で
デザイン性を追求した焼き物が存在したのです。

もしかすると、
そのような精神を持つ「反骨のアーティスト」が
当時の耀州窯に存在していたのかも知れません。

中国ではこのような蓋付きの小物入れを「合子」と呼びます。
読んで字の如く、
合子とは蓋と本体がセットになってその機能を果たします。

しかし、唐時代と言えば約1300年前ですから、
さすがに蓋と本体の両方が
完品のまま発掘されるという事は多くありません。

結構高値で売られている蓋物の古陶磁器でも、
実は別々に出土した蓋と本体を
無理やり結婚させているものがあります。

この焼き物は確実に
蓋と本体が本物の夫婦である事が見て取れますので、
その点から言っても貴重な物で
私が気に入っている1つの理由となっています。

この耀州窯白黒文合子は北京で手に入れたのですが、
買ったのは唯一現地で骨董商をやっている日本人からでした。

日本人は中国の古陶磁器を売る前に、
長年こびりついた土や汚れを落として、
綺麗にしてから販売する事が多く、
日本の有名骨董店に並ぶ中国古陶磁器は
どれもピカピカと光って新しい印象を受けます。

薬品を使って古陶磁器を綺麗にする技術は
日本人が考えだしたものなのかどうか知りませんが、
昔ながらの中国人古陶磁器鑑定家にはそれが理解できず
「古い時代の焼き物がこんなに綺麗な訳がない」
などと私の所持品に贋作のレッテルを貼ることも多々ありました。

私はあまり綺麗に汚れを取り過ぎた古陶磁器を好みませんが、
日本橋などの一流店の古陶磁器が
すごくピカピカなのはそういう理由からなのでしょう。

中国人で古陶磁器に詳しい人が
ああいう品物を見たら全部偽物だと判定するでしょう。

ただし、ネットで販売しているようなピカピカの焼き物は
全部現代製と見て間違いない所です。
本物の古陶磁器は例え表面的な汚れを落としても、
古格が失われることはありません。

 
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2008年9月17日(水)

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