第154回
私のお気に入りの一品
本日の私のお気に入りの一品は唐時代の緑釉の碗です。
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きれいな姿で発掘された唐時代のお碗 |
唐時代は中国の文化が大きく花開いた時代ですが、
陶磁器的に言っても
大変魅力的な焼き物がたくさん生み出された時代です。
有名な唐三彩、そして真っ白な白磁、
また青磁においても唐時代には
今までの原始的な青磁から
キレイな青色に発色した本格的な青磁へと進化を遂げました。
そんな素晴らしい唐時代の焼き物の特徴のいくつかを、
今回取り上げた緑釉のお碗は持ち合わせています。
まず、胎土。
唐時代には焼き物に使う土の精製技術が格段にアップしました。
土から不要な金属成分を取り去り、
真っ白に焼き上がる胎土を完成させたのです。
その土を利用して焼かれたのが、真っ白な白磁です。
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赤ん坊のほっぺの手触り すべすべです |
唐時代の白磁の優品に使われる土を褒める際に使われる言葉は、
いつも「赤ん坊のほっぺのようにすべすべだ」というものです。
今回紹介する作品の胎土も
正にそういうキメの細かい真っ白な土です。
触ると本当に赤ん坊のほっぺのようにすべすべしています。
この作品は土も最高ですが、
私が一番気に入っているのは緑色の鉛釉の美しさです。
近づいてみると、翡翠の色を
すごく意識して焼かれたのではないかと想像してしまいます。
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釉薬の表面を近くで見ると正に翡翠そのもの |
当時、シルクロードを通じた貿易取扱品の中でも
最高の価値を誇っていた翡翠、
その翡翠を焼き物で表現したのが、
このお碗だと思います。
この焼き物をじっと眺めていると、
シルクロードの風景が脳裏に映し出されます。
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表面の一部は銀化し、
1300年の時間の経過を感じさせる |
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