第161回
ハイハイ天さん、天さんデス
○今回の依頼者
[ペンネーム] きよし・N
[年齢] 後期高齢目前
[お住まい] 神戸山本通り
○依頼文
阪神大震災で我が家のビルも全壊しましたが、
唯一この花瓶は割れずにのこっていました。
胴回り120センチ、高さ29センチの丈夫な品物です。
30年位以前になると思いますが、
親しくしていた中国人の骨董商(故人)から
ぶつぶつ交換で無理矢理おしつけられた壺です。
中国のものと聞いていますが、私には判別できません。
骨董の趣味はありませんが、焼き物は大好きです。
鑑定よろしくお願い致します。
○鑑定結果
画像で拝見する限りでは、
高さ29センチで胴回りが120センチもあるようには
とても見えないのですが、
現物は大きく迫力のある焼き物だと推測できます。
このような斑模様の青い釉薬を「爐鈞釉」と呼びます。
また、日本では「なまこ釉」などと呼んだりします。
爐鈞釉は宋時代に栄えた鈞窯の濁青釉を元にして、
清の時代の民間窯で開発された焼き物です。
民間の窯では「石湾窯」や紫砂器で有名な「宜興窯」などで
爐鈞釉は焼かれました。
また、官窯のあった景徳鎮においても
それらを模倣した爐鈞釉の焼き物が焼かれています。
ご依頼の壺は、清時代の骨董と呼べるものではありませんが、
「石湾窯」の流れを引き継ぐ個人作家が焼いた
創作陶器だと思われます。
器物底面の銘款は、個人作家名またはその工房名だと思います。
中国人ぽい名前ですが、日本で焼かれた可能性もあります。
不勉強ながら、有名作家のものかどうかは分かりません。
骨董と呼べるほど古いものではないので
金額的にはそう高くないと思われますが、
とても素敵な焼き物だと思います。
○結論
阪神大震災を無事くぐり抜けた花瓶、正にお宝ですよね。
幸運の花瓶として、代々引き継いで下さい。
5世代後には、良い骨董品となっているでしょう。
○依頼品紹介
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「爐鈞釉」と呼ばれる焼き物
古いものではないが、
現物は胴回り120cmもあり迫力満点 |
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銘款は個人作家名もしくは工房名だと推測
なかなか味わいのある土味 |
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