第163回
ハイハイ天さん、天さんデス
○今回の依頼者
[ペンネーム] 夜来香
[住まい] 台北
[職業] 商社勤務(すでに定年)
○依頼文
毎回とても楽しく拝見させていただいております。
わたくしも長期の台湾駐在を経験し、
その間中国骨董に興味を持ちました。
今回の依頼品は90年代の始め頃、
台北の骨董屋さんで買ったものです。
その骨董屋さんは中国本土とのつながりがあるそうで、
常に多くの発掘品が並べられていましたが、
現在はそういう発掘品も殆どなくなってしまったようです。
写真は色が薄くなっていますが、
現物ははっきりとした黄色です。
当時わたくしは語学力がなくよく聞き取れませんでしたが、
店主はモンゴルの古い焼き物だと言っているように思えました。
買値は同時の日本円で1万円ぐらいだったと思います。
鑑定よろしくお願いいたします。
○鑑定結果
これはモンゴルではなく「遼時代」の焼き物ですね。
遼とは10世紀に今の中国東北部に
遊牧民族である契丹族が建国した征服王朝です。
陶磁器的に言えば、
遼王朝は当時の中国の正式な王朝であった
北宋の陶磁器を拝領できたので、
特に独自の陶磁器を開発するという事は殆どありませんでした。
ただ、依頼品のような黄色や
鮮やかなグリーンなどを使った遊牧民族ならではの焼き物を
少しばかり焼いています。
金銭的価値については、
北宋の優品と比べればどうしても分が悪くなります。
依頼品も5万円〜10万円で買えるものだと思います。
ただ、唐三彩と同じく遼の三彩などの焼き物は
修復したものが多く無傷のものは大変すくなくなっています。
○結論
時代が古く色使いが派手な焼き物には共通した特徴があります。
それは修復が多いという事です。
色使いが派手という事は逆に言えば
胎土の色が粘土質で綺麗ではないという事です。
胎土が粘土質の陶器は、つまり割れやすいという事です。
黄色、緑、茶色などの釉薬が派手にかかった焼き物は
どこか割れて修復されていないか
よく確認してから購入いたしましょう。
○依頼品紹介
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なかなか立派な遼時代の碗 |
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こういう陶器質の焼き物を買う時には、
まず修復されていなかを確認しよう |
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