中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第167回
中国古陶磁器 よもや話

世界の有名なオークションのカタログを見てもわかりますが、
今世界を流通している骨董の中で
中国古陶磁器の量の多さは圧倒的です。

ヨーロッパ製や日本製の古陶磁器に関して言えば、
17世紀とか18世紀の比較的新しい時代に焼かれた
伊万里やマイセンなど中国陶磁器の模倣から
大量生産に移った窯の陶磁器はそれなりに遺されていますが、
1000年以上前の古陶磁器となると、
もう残存する数は僅かなものとなります。

骨董の世界とは不思議なもので、
同種の製品にそれなりの流通量がなければ
その品物には高値がつきません。

つまり、ピンからキリまでの
「キリ」の裾野が広がっていない事には
「ピン」の価格がつかない訳です。

例えば、沢山の絵画が流通しているからこそ
ゴッホの絵に何十億円という価格がつくわけですし、
多くのアンティークバイオリンが流通しているから
ストラディバリに何億の値がつくのです。

いくら希少価値が高くとも、
殆ど世界に流通していない
2000年前の日本の焼き物になんかは高い価格はつきません。

つまり収集家が多くないと
いくらその物自体が希少で価値のあるものでも
目の球が飛び出るような価格がつかないのです。

骨董の世界では、収集家つまり
コレクターが多く存在するカテゴリーの中での一級品に
眼球飛び出し価格がつく訳です。

そしてコレクターの底辺を増やしていく為には
それなりの流通量が無ければならないという事になるのです。

そういう点から言えば、
中国古陶磁器はその流通量とコレクターの数
そして「まだ土中に埋まっているかも知れない」
という新発見期待度などが大変高いレベルで
バランスが取れている骨董だと言う事ができるでしょう。

中国古陶磁器に圧倒的な流通量があるからこそ、
ピンからキリまでの価格差ができ、
それがまたコレクターの収集熱に火をつける事に繋がるのです。

では、どうして中国古陶磁器には
そんなに多くの流通量があるのでしょうか?
それには3つの理由があります。

一つ目は、埋葬の習慣として、
死人と共に焼き物で作った「傭」(よう=人形)を埋葬した事、
またその人が日常使っていた陶磁器を
一緒に埋葬する事もあった事です。
そのような墳墓からの発掘により、
唐時代から元時代の陶磁器が市中に出回っているということです。

二つ目は、戦乱や支配者の入れ替わりが激しかった中国でしたので、
人々は何かあると貴重な品をどこかに隠したり埋めたりしました。
その習性は餌を土中に埋めるリスと同じです。
特に数多く存在した寺院において、
戦乱の度に仏像、書物、陶磁器などが地下宮に隠されました。
近代になりそういう地下宮からの発掘品も多く出回りました。

また最近の出来事ですが、
文化大革命中には高価な骨董や美術品の収集は
ブルジョア思想と見なされ、
紅衛兵たちに狙われその一部は破壊されました。
しかし、多くの骨董商たちは品物を土中に入れて隠し通したのです。

ちなみに私の妻の祖父も上海で骨董商をやっていましたので、
実際そういう目に遭わされた事を聞いております。

三つ目の理由は、過去の歴代皇帝達がその権力に任せ、
美術骨董品などを大量に収集し、
それを故宮宝物として伝承してきた事です。

しかも、その清朝崩壊後の混乱において、
その収集品が世界中に拡散した事も
現在の中国古陶磁器の流通量に
大きく貢献しているという事となります。

いずれにしても、沢山の中国古陶磁器が世界に流通し、
中国人や華僑を中心とする多くのコレクターが存在する事により、
中国古陶磁器は金銭的な価値を永久に持ち続ける事になるのです。

 
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2008年11月3日(月)

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