第179回
古陶磁器界のバフェット(続編)
前回の続きです。
デイヴィットが生死をかけて、
収集したのは中国古陶磁器の中でも
皇帝の官窯で焼かれた作品、
更に官窯の中でも優れた作品に限ります。
特に、中国古陶磁器史の解明に役立ちそうな年号の入ったもの、
題詩が書き込まれたものなどを選んで収集しています。
ここで大切な事は、
デイヴィットは金銭目的で辛苦を舐めつつ
中国古陶磁器を収集したのではない事です。
私が想像するに、彼を突き動かしたものは
「なんとしても中国の歴史そのものである
官窯作品を手に入れたい」というコレクター魂。
もう一つは、素晴らしい故宮の宝物をこれ以上拡散させたり、
「価値の分からぬ者に触らせたくない」という責任感。
そして「中国宋代から続く官窯の実態を
自分が整理分類し研究したい」という研究家魂。
この三つの強い思いがあったからこそ、
混乱の中国で多くの中国古陶磁器を手中にできたと想像します。
デイヴィットが収集した、
一級の中国古陶磁器は約1400点。
その全ては1950年にロンドン大学に寄贈され、
52年にデイヴィット財団が設立されます。
財団は1400点の一級中国古陶磁器から得る収入
(展覧会や他美術館への貸し出し、出版物への掲載など)を
中国美術や考古学の研究費用に当てています。
サー・パーシヴァル・デイヴィットのやった事を
もう一度簡単に説明すると・・
○混乱の中国において、滅茶苦茶に扱われていた
中国古陶磁器を救い出した。
○そのコレクションを整理、研究した。
○そのコレクションを元に世界中の人々に対して
中国古陶磁器の魅力を伝えた。
こういう事です。
それにしても超一級の中国古陶磁器が1400点とは
時価総額いくらになるのでしょうか?
中には、億を超えるもの、いや10億円を超えるものもあります。
最低でも数百万の作品ばかりです。
平均1000万円で計算して
1000万円×1400点=たった140億円ですか・・
今の金融恐慌の金額になれてしまうと
大した金額じゃありませんが、
この140億円の価値は我々中国古陶磁器ファンにとって
アメリカの銀行を救済する為の何十兆円よりも大きいのです。
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デイビィット瓶と呼ばれる元時代の青花磁器
器体に「至正11年(1351年)」と描かれている。
このような青と白の磁器の製造が
元時代まで遡る事を証明した有名な陶磁器。 |
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