第182回
ハイハイ天さん、天さんデス
○今回の依頼者
[ハンドルネーム] 記載がございませんでした
[お住まい] 徳島県
[年齢] 50代
※最近の依頼に自己紹介がないものが増えています。
私の鑑定は人を見て行いますので、
できるだけ詳しい自己紹介をお願いいたします。
○依頼文
私の息子が古美術品の収集にハマっていまして
彼のコレクションを鑑定していただきたく思いまして
今回はメールを送りいたしました。
息子曰く
今回の2点はそれなりに価値のあるものらしく
自信をもっているみたいです。
大きく蓋のついている方が
明時代の古染付というものらしく、
小さい底にイラストのある壷も
同じころの作品だそうです。
市内の骨董市で買ったそうですが
価格までは教えてくれませんでした。
大きいほうの高さがおおよそ23センチ(蓋含めて)
小さいほうの高さは13センチほどです。
傷は特になかったように思います。
それでは、宜しくお願いいたします。
○鑑定結果
これは、両方とも古いものじゃないと判定いたします。
明時代の末に景徳鎮の民間の窯で焼かれた
青花磁器を模倣したものだと思います。
この手の明末の青花磁器の贋作は近年大変優れたものが多く、
依頼品のような品を本物として扱っている骨董店も
多く見かけられます。
贋作と本物の見分け方としては、
贋作はまず釉薬の表面がヌメっとした感じがする事と
絵付けに説得力がない事です。
本物の明の青花磁器の表面は
このようにヌメっとした感じはありません。
それと明時代末と言っても、すでに600年経っている訳ですから、
器物にはそれなりの古格が現れてきます。
依頼品の高台回り(底部)は時間の経過を感じるというよりも、
わざと崩した感じがいたします。
また、明時代の壷を見分ける特徴として
「胴継ぎ」という手法があります。
一つの壷を作る場合、二つのお碗を作り、
それをくっつけて壷の形にするのです。
依頼品にも、壷の真ん中辺りに「胴継ぎ」の跡が見て取れます。
本来ならば、外から見て
「胴継ぎ」の跡が見えないようにするものですが、
意識的に胴継ぎを見せている感じがします。
○結論
この手の明時代の青花磁器は
日本で本物として通っている場合が多いのですが、
中国での贋作事情を知ると、
その多くは贋作と言わざるを得ません。
私は、この手の贋作を業者が
卸している光景を目撃した事があるので、
これを贋作だと判定しますが、
多分日本の骨董屋さんは
本物と言う場合が多いのではないでしょうか。
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依頼品1 |
表面がヌメッとしている |
作為的に崩した高台、古格が感じられない |
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依頼品2 |
絵付けがあまりにも稚拙
600年の時の経過が感じられない |
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明時代の真品と思われる作品 |
表面をルーペで見ると無数の擦れ傷があり、古格を感じさせる。
器形や絵付けに説得力がある。 |