中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第185回
中国古陶磁器 名品紹介

今回紹介するのは、
東京国立博物館所蔵の『龍泉窯 青磁茶碗 (銘)馬蝗絆』です。

東京国立博物館 解説リンク

この青磁茶碗は、
日本にある中国古陶磁器の中でも特に有名な存在です。
と申しますのは、
過去の日本において上質の中国古陶磁器が
いかに貴重なものとされ羨望の的となっていたか、
又中国においても宋時代の陶工の技術がいかに優れていたか・・
そういう事を端的に示す物証として
「馬蝗絆」は大変重要な中国古陶磁器なのです。

ですので、東京国立博物館の「馬蝗絆」の
陳列ケースの前にはいつも多くの人だかりができています。
人気となっている理由は、
まず何よりもこの茶碗に関する由来です。
由来に関しての書物が、茶碗と共に残されています。

----------------------------------------------------------
<内容>
日本に伝わる青磁茶碗を代表する優品である。
江戸時代の儒学者、伊藤東涯が記した『馬蝗絆茶甌記』によると、
かつて室町時代の将軍足利義政が
この茶碗を所持していたおり、ひび割れが生じたため、
代わるものを中国に求めたところ、
明時代の中国にはもはやそのようなものはなく、
鉄の鎹でひび割れを止めて送り返してきたという。
この鎹を大きな蝗に見立てて、馬蝗絆と名づけられた。

----------------------------------------------------------

ただ私は足利義政には興味がありませんので、
この茶碗の由来を見て気になる事はただ一つです。
それは『明時代の中国にはもはやそのようなものはなく、
鉄の鎹でひび割れを止めて送り返してきた』という部分です。

この「馬蝗絆」は13世紀南宋時代に
龍泉窯という窯で焼かれた青磁です。

そして当時日本に渡来し、
誰かが所有して名品として有名になり
それを将軍が手に入れたものだと推測できます。

ですので時代背景的に言えば、
足利義政が手に入れた時にはすでにこの青磁茶碗は焼かれてから
約200年が経過している事となります。

つまり、宋時代に焼かれた骨董茶碗が割れてしまったので、
200年後の明時代に「同じようなものが欲しい」と頼んだが、
「今このような焼き物の再現は不可能だ」
と言われてしまったという事です。

しかし、宋時代に作られた焼き物を、
200年後の明時代に再現できない事などあり得るでしょうか?

それは勿論あり得ます。
日本でも江戸時代の蒔絵細工などの中に
とても再現できないものがあるのと同じく、
伝統工芸そして職人技というものは
時代と共に廃れていく宿命を持っているのです。
そういう事実を、この「馬蝗絆」は物語っているとも言えるのです。

補修用の鉄鎹が馬蝗(いなご)に見える事から
「馬蝗絆」と名付けられた。
すでに明時代には再現できなくなったほど
奥深い色の青磁碗である

磁器は轆轤作りの時の捩れから
このような形に割れる事がよくある
こういう割れ方を『馬の毛』とも呼ぶ
 
←前回記事へ

2008年12月15日(月)

次回記事へ→
過去記事へ 中国株 起業 投資情報コラム「ハイハイQさんQさんデス」
ホーム
最新記事へ