中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第188回
中国古陶磁器 名品紹介

今回紹介する中国古陶磁器の名品は、
台湾故宮博物院収蔵の「明成化、豆彩鶏缸杯」です。

解説リンク

行かれた方は分かると思いますが、
台湾の故宮博物院には
圧倒されるような迫力を持った中国古陶磁器が
大量に展示されています。

しかし、今回紹介する「明成化、豆彩鶏缸杯」は
高さ4センチ 口径8.3センチほどしかありません。
特に、元時代から清時代までの官窯の作品は大作が多いので、
こんな小さな杯なんて
それら大作の中に埋もれて見逃してしまいそうです。

でも現実はそうではなく、
ディープな中国古陶磁器ファンは博物館に入場するやいなや、
大きな唐三彩の馬や
豪華絢爛の清朝官窯の色絵磁器などには目もくれず
この小さな杯の前に集まります。

世界的な中国古陶磁器の人気ランキングから言えば
いつもベスト3に入るのがこの明時代成化帝時代の官窯で焼かれた
「豆彩」という焼き物なのです。
では、一体何がそれほど魅力的なのでしょうか?

まず第一に希少価値です。
完全な姿で遺された成化豆彩の磁器は
世界に数える程しかありません。

と言うのも、
最初からこの焼き物は
輸出や下賜用に大量に焼かれたものではなく、
あくまでも皇帝が身近で使うような小さな杯や小皿、
小瓶などの作品が少量焼かれたに過ぎないからです。

いや、焼かれた数は膨大だったかも知れません。
ただ、皇帝に献上される為には
完全無欠の出来栄えである必要があり、
そういう作品は少数しかなかったという事です。

それを証明するかのように、
近年の景徳鎮の発掘で大量の成化豆彩の廃棄物が発掘されました。
一見すると「どこに失敗が?」
と思われる品でも打ち捨てられています。

つまり、このような色絵釉上彩
(一度透明釉をかけて焼いた白磁の上に彩色する手法)は
明時代の初期にようやく完成したばかりで、
まだまだ簡単に思うような発色に
焼き上がらなかったのだと推測できます。

何百個焼いた中から最高のものを皇帝に献上し、残りは廃棄。
そして成化豆彩は極薄作りの為、
皇帝の所蔵品として伝えられていく間にも破損され
どんどん希少なものとなっていったという事でしょう。

同じ明時代の末期になると、
すでに成化豆彩は大変価値の高いものとして
皇帝達が愛玩したと文献にも残されています。

その魅力はとにかくベースとなる白磁のしっとり感と、
全て自然物から苦労して作り出した釉薬の微妙な色合いでしょう。
これを600年前に作った事が凄いのです。

台北に行かれる際には、
是非故宮博物院でこの小さな杯をご覧下さい。

裏には「大明成化年製」の銘が入る
あまりにもこの銘に人気があったので、
江戸時代に焼かれた伊万里焼の裏にも
この銘が入ったものが多く存在する
 
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2008年12月22日(月)

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