第209回
私のお気に入りの一品
今回紹介する「私のお気に入りの一品」は
清朝宣統期の青花唐草花紋小盤です。
これは特に見所があるお皿ではありませんが、
私が気に入っているのはこの焼き物が焼かれた年代です。
焼き物の裏に書かれた「大清宣統年製」とは
清朝第12代皇帝の宣統帝の時代に焼かれた官窯品
という事を示しています。
宣統帝とは、映画ラストエンペラーでも有名な愛新覚羅溥儀の事、
つまり何千年も続いてきた
中国の皇帝統治の歴史に遂に終止符を打った
本当に最後の最後の皇帝です。
宣統末期の景徳鎮には
もはや官窯も民窯もないような状況だったのでしょう。
このお皿も一応宣統官窯の作品だと思いますが、
けっこう雑な仕上がりです。
清朝崩壊の危機に瀕していたこの時期に、
誰も真剣に陶磁器の製作にあたっていたとは思えません。
悪名高き西太后が実質的に支配していた清朝末期、
景徳鎮官窯の作品は清朝黄金期だった
乾隆帝時代までに開発された技術を模倣したものが殆どで、
価格的にも乾隆帝時代のものには遠く及びません。
そんな、ラストエンペラーの時代のお皿ですが、
一つだけ乾隆帝時代の官窯作品に負けない部分があります。
それは裏に書かれた「大清宣統年製」
という字体のノビノビとした筆跡です。
官窯の管理が厳しかった頃には、
裏の銘款も完全に画一化された面白みのないものでした。
しかし、もはや皇帝直属の監視官もいなくなった
清朝末の景徳鎮において、
陶工達は自由に筆を走らせていたことでしょう。
そういう時代背景こそがこの皿を魅力なのです。
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特に特徴のない普通の青花の皿だが・・
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「大清宣統年製」とは
ラストエンペラー溥儀の時代
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高台には砂がつき、雑な焼き上がりだが
文字の筆跡はノビノビとして力がある。
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