第215回
中国料理
今回も「中国古陶磁器に盛って映える料理」
略して、中国料理のコーナーです。
今回紹介するのは、私の大好物のピータン(皮蛋)です。
ピータンはベトナムのホビロンと並んで
アヒル卵界の二大異端児扱いされていますが、
この二つはハッキリと区別しておくべきです。
ホビロンは孵化する寸前のアヒルの卵を茹でたもので、
殻を割ると雛になりかけの物体がはっきりと見えます。
見るだけでも遠慮したいのに、
それを食べる人がいると言うのですから、なお更驚きです。
私はアヒル界を敵に回したくありませんので、
ホビロンを食べる事はまず一生ないでしょう。
それに比べて、アヒル卵界の中国王者である
ピータンの崇高さはどうでしょう。
ピータンは生のアヒルの卵に
石灰や木炭などのアルカリ性物質をタップリ含ませた泥を塗り、
籾殻でコーティングして貯蔵し、
アルカリとタンパク質との間に起こる
微妙な化学変化によって完成されます。
その化学変化を象徴するように
ピータンの表面にはアルカリ成分の結晶が浮き出ています。
そして、透明でドロドロだった白身部分は
ブラックダイヤの如く宝石の輝きを放ちます。
つまり、ピータンとは偶然の化学変化により
その味と美が正に芸術的な域にまで達した食材なのです。
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ピータンの表面に浮かぶ結晶
その形から「松花」と呼ばれる
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そんな素晴らしいピータンですが、
一番最初に食べる時にはやはり勇気が必要だったと思います。
多分、ピータンはたまたま石灰質の泥の中に
アヒルの卵を保存しておいたら、
中身が変質して偶然出来たものでしょう。
とすれば、一見腐りきったように見え、
且つアンモニア臭が強く真っ黒に変色した卵を
よく口にしたものだと思います。
では、ピータンの食べ方について説明いたしましょう。
最近ではピータンは大変メジャーな中華食材になりましたので、
薬局と仏壇屋以外ならどこでも置いてあると思います。
買ってきたら、
まず籾殻に包まれた泥をよく洗い落としましょう。
すると、灰色の殻に包まれた卵が現れます。
殻を剥きましょう。
そして黒い卵の表面の松花(結晶)をしばし鑑賞した後、
卵を優しく手に包んだまま包丁で切ります。
まな板に置いて切ると
半熟の中身が飛び出す可能性がありますので、
手に乗せたまま半分に切って下さい。
まずはそのまま食べましょう。
適当な大きさに切って、
しばらく放置しアンモニア臭を逃がします。
そして少しの醤油と多めのごま油をかけて召し上がって下さい。
付け合せにはなぜか「紅生姜」、お酒は「紹興酒」が合います。
次にピータンを使った代表的な料理を二つ紹介します。
一つは「皮蛋豆腐」一つは「皮蛋粥」です。
皮蛋豆腐は、絹ごし豆腐の上に細かく切ったピータンと
葱の微塵切り、あれば香菜をタップリのせ、
中国醤油と胡麻油とラー油をかけてよく混ぜて食べます。
皮蛋粥は、普通の中華粥にピータンを入れるだけです。
どちらもシンプルな料理ですが、私の大好物です。
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