中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第218回
中国古陶磁器 名品紹介

今回紹介する作品は、
中国北宋時代に河北省の定窯焼かれた「銹花唐草文瓶」です。

この作品は大阪市立東洋陶磁博物館に所蔵され、
日本の重要美術品にも指定されているほどの名品です。

白磁土の上に鉄泥を流しかけ、
それを掻き落として文様を浮かび上がらせる

解説リンク

今回紹介する作品が焼かれた定窯は
宋時代に栄えた最も有名な「白磁」の名窯でした。

よく精製された定窯の白磁土は他の窯にはないもので、
他の窯はこの白磁の真似をしようと思ってもできなかった訳です。

しかし、当の定窯では
白磁の名窯として白磁だけ焼き続けていれば良いかどうかについて
迷いがあったのかも知れません。

その証拠として、
極少数ながら今回紹介する作品のように純粋な白磁ではない
陶磁器が残されているのです。

それらの全ては鉄分を含んだ釉薬によって
黒や褐色に発色したものですが、
今回紹介する作品はその中でも珍しい
「掻き落とし」という手法を用いて焼かれています。

「掻き落とし」と呼ばれる手法は、
文字通り白の土の上に褐色の釉薬を混ぜた泥を
まんべんなく流しかけ、それを削って模様を表すものです。

今回紹介する作品は、
表面の褐色とそれを削って出てきた白色のコントラストが
大変美しく仕上がっています。

もともと、この「掻き落とし」という手法は、
同時期に一般大衆品を大量に焼いていた
「磁州窯」という窯が開発したものでした。
また、黒や褐色の焼き物も「磁州窯」が本場です。

「磁州窯」で
こういう類の焼き物が焼かれたのには理由があります、
それはあまり良い土が採れなかったので、
仕方なく色々と装飾して
土の質を誤魔化していた部分があるのです。
それを最高の土が採れる定窯が真似したのが
今回の作品という訳です。

掻き落とし技法を発明した磁州窯の作品
お世辞にもキレイとは言えない胎土を
隠す為に、こういう装飾法が生まれた

元々、硬質で完成された白磁によって
名声を得てきた定窯ですので、
このような作品は亜流とも言えます。

簡単に言えば、
最高の銀シャリ(お米の事)を提供していた高級ごはん屋が、
庶民が質の良くない米に味噌汁をぶっかけて食べているのを見て、
自ら「ぶっかけ飯」を売り出してしまった
という感じではないでしょうか?

しかし、結局「銀シャリのぶっかけ飯」は
ヒットメニューにはならなかったようです。

いずれにしても、定窯の白磁以外の作品は
残されている数が非常に少なく、
現在では大変貴重で高価なものとなっています。

 
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2009年3月2日(月)

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