中国古陶磁器 そのロマンを求めて-天青庵

単なる美術品ではございません

第228回
私のお気に入りの一品

今回紹介する私のお気に入りの一品は
南宋時代に焼かれた「建窯天目碗」です。

以前のコラムでも紹介した「建窯」は胎土、
釉薬とも鉄分タップリで、正に鉄分の焼き物と言えるものです。

日本では一般的に、
このような黒か茶褐色の碗を「天目碗」と呼んでいますが、
中国では「天目」という呼び名は用いません。

「天目碗」と言う名称は、
宋時代に禅宗の中心地だった「天目山」からきています。

鎌倉時代には多くの日本人が「天目山」に留学し、
禅宗を勉強しました。

そして当時中国で流行していた
「喫茶」(お茶を飲む)の習慣も好んで嗜み、
そこで使用されていたお茶碗を日本に持ち帰り
「喫茶」の習慣を日本に広めました。

そのお茶碗こそが、
福建省の建窯で焼かれた黒い鉄釉碗だったのです。

その後、日本ではこのような形の黒や茶色の抹茶碗の事、
また更に拡大解釈して黒い釉薬がかかった焼き物全般の事を
「天目」と呼ぶようになりました。

私は真っ黒のキレイな釉薬が掛かった普通の建窯天目碗も
いくつか保有していますが、
一番気に入っているのは焼成時に殆ど釉薬が流れ落ち
荒々しい胎土が丸出しになったこの茶碗です。

まるで、日本の「古備前」のようにも見えるほど、
その土味がよく分かります。

今回紹介した「建窯天目碗」は
当時焼かれた天目碗の中でも
普通のお坊さんが使用していたような安物です。

私は、高級で非の打ち所がないような作品よりも、
安物でも失敗作でも良いから
どこか他とは違った見所がある焼き物に魅力を感じるのです。

鉄釉が流れ落ちてしまい
古備前のような雰囲気になっている。
強い酸化焼成で赤茶色に発色

本来、全体に掛かっていなければならない釉薬が
下の方に垂れてしまっている

こちらは丁寧に作られ丁寧に還元焼成された
建窯の輸出用高級品
(京都国立博物館の所蔵品)
解説リンク
 
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2009年3月25日(水)

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